先月は16冊、うち7冊が小説と、通常のペースに戻った月でした。
小説では、最近話題の万能鑑定士シリーズを2冊読んでしまいました。この作者の作品では、千里眼というシリーズがあって、昔は結構好きで読んでいましたが、話題になったこともあって、ひさしぶりに手にいたしました。何れも人が死なないミステリーで、それほど長くもないので少しの移動時間で読むにはもってこいの本だと思います。
それ以外では“一神教と国家”“地球外生物”の2冊が、結構面白くお薦めです。
実は我々が当然だと思っている哲学、“万物に神が宿る”“八百万の神”というのは、世界の中ではとても独特な考え方です。これからそうではない価値観を持った人々と嫌でも交流をしていかなければならない我々には、この“一神教”という“世界標準”についての理解が不可欠です。また、“地球以外の天体に生物は存在するのか”ということは、当分明かされそうにもない命題です。原始地球と同じ環境が再現できたとして、その世界で生物が誕生するのは必然なのかはたまた偶然なのか。当然のことながらこの論争に決着はつきません。奇跡のような星、地球、この星に生命が誕生したのが偶然だとしたら、そこには何か大きな者の意思が働いたのではないか。そんなことを考えてしまいました。
001/050
「万能鑑定士Qの事件簿Ⅵ」松岡圭祐
昔、彼が書いた千里眼シリーズが面白くて読んでいたが、いつ頃からか全く手にしなくなった。久しぶりに彼の作品が映画化されると聞いて、図書館で借りてみた。どうやら凄い人気シリーズになっているようで、ほとんどが貸し出し中だったが、残った物からチョイス。どれもが1話完結になっていて、どれから読んでも大丈夫という触れ込みで、これもシリーズ途中ではあるが、十分に楽しめた。(5/4)
002/051
「競争戦略Ⅰ」マイケル・E・ポーター
彼の競争理論を久しぶりに読みたくなって図書館で借りてみました。“戦略は、競合他社とは異なる活動を行うこと、あるいは競合とは異なる手法で行うことを意味する。”効率化はすぐに模倣され陳腐化する。戦略とはポジショニングなのだ。(5/5)
003/052
「発達障害に気づかない大人たち<職場編>」星野仁彦
別に意図があって買った本ではないけど、なんとなく興味があって買った本。どうも著者自身が発達障害だそうで、自分がそうであった場合の対処法などが書かれていて、妙に興味深い。(5/5)
004/053
「首折り男のための協奏曲」伊坂幸太郎
本来の伊坂ワールド満開。本来は2008年から2013年に掛けて書かれた全く関連のない短編をまとめた物で、それがなぜか一つのハーモニーになっている。それぞれが全く違う趣向で書かれていて、一時はもう彼の本を手にすることはないかなぁとまで思っていたけれど、久しぶりに良かったなぁ。(5/7)
005/054
「桜が創った『日本』」佐藤俊樹
私たちが“桜”に託して持っているある種のイメージは、明治維新以降にある目的を持って創られた虚構である。春になって全国で桜の開花が待ちわびられ、国を挙げて花に狂う様は何やら不思議な風景である。それにしてもソメイヨシノという花は不思議な花である。(5/11)
006/055
「一神教と国家~イスラーム、キリスト教、ユダヤ教」内田樹、中田考
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教と続く“一神教”と“国家”というのは、本来は相容れない物である。従って、今、キリスト教社会が世界を席巻しているように見えても、実はその宗教は本来の姿を投影していない。宗教と国家のありようについて、二人の論客が対談しているのだが、言葉の量は内田氏の方が圧倒的に多い。いずれにせよ、イスラム教についてざっくりと理解しようとするには、とても解りやすい本である。読みやすいし、結構お薦めかも。(5/14)
007/056
「負けてたまるか! リーダーのための仕事論」丹羽宇一郎
彼の話は決して嫌いではないのだけれど、この本に限ってはそれほどハートには響かなかった。そういえば、三顧の礼を持って大使に任命したはずなのに、結果的に国を挙げて足を引っ張ったことは記憶に新しい。(5/15)
008/057
「珈琲店タレーランの事件簿3~心を乱すブレンドは」岡崎琢磨
人気シリーズの3作目で、初の長編。鋭い観察眼を持つ主人公がとても魅力的。肩を張らずに読めるところが嬉しい。(5/16)
009/058
「司馬遼太郎」谷沢永一
司馬遼太郎の没後に、谷沢永一がいろんなところで書き記した“司馬遼太郎論”を集めた物。著者が指摘するように、司馬遼太郎の小説はかなり独特で、初出当時はかなり異端扱いをされていたようである。彼によると、傑作はいくつかあるが、“空海の風景”が秀逸だとか。早速図書館で借りてみる。(5/17)
010/059
「ザ・万歩計」万城目学
人気作家のエッセイ集。小説も独特の世界があってとても面白いのだが、このエッセイも期待に違わず面白い。どこからこれほど秀逸なアイデアが湧いてくるのだろうか。まさに天才。(5/17)
011/060
「世界から猫が消えたなら」川村元気
一昨年の本屋大賞で、ベストテンに選ばれていたので、どんな本かと思い借りてみた。ストリーは、突然現れた死神に、今日までの命と言われながらも、世界から何か一つの物を消すことによって、一日の命と引き替えることができる特典を与えられた主人公が、最後は、他の物の存在と引き替えに生きながらえることに苦痛を覚え、誤解したまま音信を断った父との和解に臨むところで物語は終わる。自分の一日の命は“猫”よりも価値があるのだろうか。
(5/18)
012/061
「ターミナルタウン」三崎亜紀
彼の書く作品は、常に“どこかにある不思議な国”を舞台にしており、我々が住むこの世界とは、少し違った価値観に支配されている。工業化の波に押され絶滅しようとする、“手作りの技”が見直されようとする、何か今我々が住む世界にもあったような話題である。(5/18)
013/062
「日本の論点」大前研一
今、我々が直面し、考えなければならない論点をいくつか示している。過去に確かに彼が指し示してきたことはおおむね正しかった。確かにそのように世界は変わってきた。とは言いながら、それって結局は必然だったのではないか、それに抗うことはできるのか。流れを変えることはできるのか。流れに旨く乗る方法を考えなければならないということか。(5/20)
014/063
それほど期待はしていなかったのだが、これは面白かった。人のエゴと欲が見事に描かれている。究極の状況に追い込まれたとき、人はどのような行動を取るか。(5/24)
015/064
「地球外生物~われわれは孤独か」長沼毅、井田茂
生物学者と物理学者が地球外生命の可能性について語るという、とても面白い企画の一冊。我々が知る自然界では、エントロピーは常に増加する方向に変化が進みます。しかしながら無機物しか存在していない世界において生命が誕生するには、その逆エントロピーが減少していく方向に変化していかなければなりません。そんなことが起こりうるのだろうか、いやそんなことが起きたから地球上に生命が誕生したのだとも言える。まだ、誰もこの謎を解明した者はいない。(5/25)
016/065
「万能鑑定士Qの事件簿Ⅸ」松岡圭祐
今話題の映画の原作なので、ついつい買ってみました。設定と言い、登場人物のキャラと言い、なかなか上手だなぁ。また、頭を使わなくても良いのがなおよろし。(5/25)