5月は比較的忙しかった印象が残っているのですが、終わってみれば全部で20作。うち小説は9作、新書が4作ありました。話題作としては東野圭吾と真保裕一の2作がありましたが、期待値が高すぎたせいか、読後感はイマイチ。ノンフィクションではNHKスペシャルを文章化した“巨大津波”がとても読み応えがあった。また新書では“出雲と大和“が大変おもしろかった。丹後に生まれ丹波亀岡に住む身としては大変興味ある内容で、お薦めできる一冊です。
001/080
「生存者ゼロ」安生 正
“このミステリーがすごい”の大賞受賞作なのですが、どうにも私にはそれほどの作品とは思えません。あまりにも設定が荒唐無稽であったり、“謎の正体”がドン引きしてしまうような物であったり、登場人物の描写があまりに稚拙であったりと、ダメだしの材料には事欠きません。どうもいかんですねぇ。(5/1)
002/081
「道元百話」中野東禅
こちらは、もっと簡単に読めるかと思ったのですが、予想以上に手こずってしまった。著者が学者兼曹洞宗の僧侶と言うこともあってか、文章自体がかなり読みづらい文章になっている上に、相当の予備知識を要求される中身になっている。かなり難解でした。(5/4)
003/092
「ビックツリー」佐々木常夫
先日、著者の公園を聞く機会があったので、図書館から2冊借りだしてきたもの。これは彼の最初の著書で、仕事をしながら、家庭内で発生した数多くのできごとに長い年月を掛けて対処してきた様が綴られている。なかなかに壮絶な人生である。(5/4)
004/093
「夢をかなえるゾウ2」水野敬也
柳の下に二匹目のドジョウはいなかった。今回作のほうが小説としてのできは良かったかもしれないが、この本は、おそらくそういった娯楽性を求めて読まれるべき本ではないと思う。まだ次を書くつもりだろうか。(5/4)
005/094
「働く君に贈る25の言葉」佐々木常夫
先の本と同時に借り出してきたもの。形は変わっているが、書かれている内容は、実は前作と大きく変わっていない。変わったのは編集で、長年にわたって、彼が行ってきた仕事あるいは人生への取り組み方を、うまく25の言葉にまとめてある。編集力の勝利。(5/4)
006/095
「夢幻花」東野圭吾
かつて存在した“黄色い朝顔”をテーマにしたミステリー。実は10年くらい前に雑誌に連載したものを基に書き下ろしたものだと言うことだが、そのため台詞回しの古さと設定の新しさ、むやみに出てくる“スタバ”や“タブレット”といった、今様の単語に、違和感を覚えながら読ませてもらった。他の作家ならいざ知らず、東野圭吾としては、ちょいとイケてない作品になってしまったのではないか。(5/5)
007/096
「メンタリング・マネジメント」福島正伸
鏡の法則の著者が10年以上前に書いた本。内容的にはとても似通った内容であるが、この本ではまだ、マネジメントに力点が置かれていて、ビジネス現場で活用されることを前提に書かれている。とても読みやすい。(5/6)
008/097
「天国はまだ遠く」瀬尾まいこ
著者は元府内の学校で国語の教師をされていたそうで、その頃に赴任した丹後地方を舞台に書かれた小説。具体的にどこを舞台にされているかは書かれていないので、想像もできないが、のどかな風景が伝わってくる。(5/6)
009/098
「職場のメンタルヘルス実践ガイド」佐藤隆、フロービス経営大学院
ちょっと事情があって急遽読むことにした。かなり以前に買ったままにしてあったのだが、これからはこういった面でもしっかりと心配りが必要になってくる。読み通すと言うよりも、職場の机の中に常に置いておきたいような本。(5/6)
010/099
昔読んだんだけど、最近テレビドラマにもなったよなと思い出し、もう一度読んでみた。まだ、若かりし頃の作品で、作風もその若さを反映している。そういえば、あの頃はこういったSF風の作品も結構書かれていていたことを思い出した。今度は蒲生低事件をもう一度探して読んでみようかな。(5/11)
011/100
「7つの会議」池井戸 潤
どこの企業内でも起こりうる不祥事の隠蔽に関する小説。まぁ、最後は収まるところに収まると言うことで、かなり予定調和的な話の展開になっている。もう少し意外性のある展開を期待したのだが。(5/12)
012/101
「おどろきの中国」橋爪大三郎、大澤真幸、宮台真司
“ふしぎなキリスト教”に続く、対談、鼎談形式の一冊。今度テーマは“中国”で、彼の国の特質から始まって、日中関係の経過、今後について論が進む。最後に触れられる“日朝関係”については、もう少し詳しい説明を望みたい。(5/18)
013/102
「ローカル線で行こう!」真保裕一
東北地方の赤字ローカル線を舞台にしたお仕事小説。ストーリーは予想どおりで、安心して読めるのだが、その分意外性はない。また小説ではキーになる県庁職員の描き方が、あまりにピント外れで、なんだか痛々しい。彼の話はおもしろいんだけどねぇ。残念。(5/19)
014/103
「地球全史の歩き方」白尾元理
“地球全史”という、地質学上の絶景写真を集めた写真集があるようで、この本はその写真を撮る際に訪れた世界各地での記録集的な内容となっている。文章を専門にする人ではなく、写真家と言うこともあって、少々読みづらい。写真も中途半端な写真が多く、どっちつかずのできあがりとなってしまい、かなり残念。せっかく岩波書店の出版なのに。(5/19)
015/104
「ニホンブンレツ」山田悠介
東西に分裂した近未来の日本を描いた小説。若い人たちに人気の作家なのだが、この本に関しては、かなり不満。タイトルに惹かれて読んではみたものの、完全な空振り。(5/21)
016/105
「巨大津波 その時ひとはどう動いたか」NHKスペシャル取材班
同名のテレビ番組を文章化したもので、残念ながらこの放送のことは全く知らなかった。ルポルタージュとしてもとても秀逸で、“あの日”のあの映像のなかで、一体何が起こっていたのかを知るための手がかりとなる。“あの日”の“あの場所”で生死の境を分けた物は一体何だったのか。目の前で命が失われていく様を目撃してしまった人たちの心の内を思うと胸が張り裂けそうになる。(5/22)
017/106
「公共事業が日本を救う」藤井 聡
公共事業=性悪説を真っ向から否定する論文。一つ一つのデータから導き出される結果は、確かに著者の主張するとおりである。著者は、公共事業が目の敵にされることで、必要な予算が削減され、国家としての力がどんどん失われていると嘆く。その主張は理解できるが、一方で過去何十年にもわたって不透明なよりがされてきたことも、あながち間違いではなかろう。そこへの十分な憲章がなされないままに、このような主張をされても信用することは難しい。(5/23)
018/107
「コレキヨの恋文」三橋貴明
なんだかこれは不思議な本。何を意図して書かれた物なのか十分に理解できなかった。ただ、最近見直されている高橋是清という人物には大いに興味が湧いてきた。確か城山三郎が彼を主人公に小説を書いていたと思っていたのだが完全な勘違い。彼について書かれた本はおどろくほどう少ないようである。(5/26)
019/108
「哲学のヒント」藤田正勝
“哲学”について考えるための“道しるべ”として、様々なテーマについて、先人達が考えたことを教えてくれる本。もちろん答えがあるわけではないので、これらのヒントを手がかりとして、真理を求めて考える習慣を身につけたい。(5/28)
020/109
「出雲と大和」村井康彦
過去の通説にはとらわれず、自由な発想で“出雲王国”と“大和政権”について新たな考えを提示してくれる。特に出雲と丹波(丹後)との関わりについて、独特の考察を加えるとともに、邪馬台国の所在地を大和地方と推定している。また、邪馬台国と大和政権には連続性がないことを明らかにしていることも目新しい。(5/30)