2013年4月6日土曜日

2013年3月


三月は忙しかったのですが、なぜか本だけは順調に読むことができました。25冊ですから、かなり多かったですね。中でも、以前から読みたいと思っていた“64”を、ようやく読むことができたというのが、今月のトピックでしょうか。実際の事件と、警察組織内部の軋轢が、同時並行で進むとってもおもしろい展開となっております。あの“ソロモンの偽証”が、各賞で二位に甘んじたのも、頷けるできばえです。次作がとても楽しみです。それ以外の今月は、お酒関係の本が2冊入っています。お年は仕事で日本酒にフォーカスを当てたいと考えており、その勉強のため読んでいます。世の中の呑兵衛達の本を探しています。


001/041
夢のような幸福」三浦しをん
彼女の場合、小説もさることながらエッセイもとんでもなくおもしろい。本編も妄想爆裂、抱腹絶倒のオンパレード。どこまでが本当なのか、見極めが難しい。(3/1)

002/042
清須会議」三谷幸喜
早く読みたくて、図書館に予約してようやく借り出せた一冊。およそ半年待ったのではないか。本作は現在映画化の最中だそうで、作品が仕上がるのが本当に楽しみ。小説では、登場人物達の独白を全て現代語で綴った初めて見る形式。それでいて登場人物達のキャラクターが非常に魅力的に描かれている。映画はまた違った形で仕上がるとか。この秋が楽しみである。(3/2)

003/043
幻色江戸ごよみ」宮部みゆき
宮部みゆきのお得意の江戸自体もの。人情話とややオカルト的なものが入り交じった短編集。昔に読んだはずなのだが、どの話にも全く覚えがない。読んでいると思ったのは勘違いだろうか。それにしてもこの作品もおもしろうございました。(3/2)

004/044
四十九日のレシピ」伊吹有喜
テレビドラマにもなった小説。この小説の主人公はすでに故人となっており、残された人々が、その人物像を具体化していくという小説。なかなか魅力的な主人公である。そして重要な役割を演ずる“イモ”と“ハルミ”の正体は一体何だったのか。これも今、映画化の最中だそうで、今年公開です。(3/3)

005/045
ナミヤ雑貨店の奇跡」東野圭吾
例によって、図書館でようやく借りだした本。今作はミステリーではなく、ややSF的な小説で、系統としては再ブレークのきっかけとなった“秘密”に近い部類。33年の時を隔てて、様々な登場人物を上手くクロスさせがら物語が展開していく。とても巧みな運び方と感心する。本当に外れのない作家である。(3/4)

006/046
酒が語る日本史」和歌森太郎
これはおもしろい本だった。歴史学者としても名高い著者が、“酒”と“酒飲み”をテーマに、それこそ“酒”という雑誌に連載したものらしい。多くの昔人が出てくるのであるが、“大伴旅人”については、この本で初めてその名を知った。万葉集に出てくる歌人らしいのだが、酒を讃える13の歌というのが万葉集に残されている。原文は万葉仮名なので、とても読めるものではないと思うが、なかなかに味わい深いものである。(3/9)

007/047
算法少女」遠藤寛子
以前、どこかの漫才師が勧めていたのを見つけて読んでみた。どうやら江戸時代に、この小説の元になった“算法少女”という書物が実際にあったらしい。父と娘が算法についてわかりやすく解説した書物らしいのであるが、著者などは全く判っていないそうで、できることなかその内容を読んでみたいものである。おそらく理解はできないだろうとは思うが。(3/9)

008/048
男性不況」永濱利廣
最近話題の書籍を図書館で予約の末、借り出すことができた。この著者も工学系出身の経済学者であり、最後のマクロ政策の主張に若干の危うさを感じる。経済は感情で動いていると言うことを忘れないで欲しい。とはいえ、現象として表れている、男性職場の減少が今の長期経済停滞を引き起こしているという主張には、頷けるものがある。今後も、その傾向が続くことは間違いないところであり、それならば、それを所与の条件として今後の社会設計を描いていくしかない。(3/9)

009/049
これも、スーパー公務員のお話。こんな部下が実際にいたら大変だろうな、と思う一方で、この10分の1のやる気を見せてくれる職員がいてくれたた言うことがないのに、と思える現実が悲しい。なぜ東京で華やかな職種に就いていた著者が、民間企業を辞めて、故郷の市役所で働き始めたのか、その理由が明らかになるのは、本の終わり近く。これだけのことをやってのけることができた、理由が少し理解できたような気がする。自己PRに終始しがちなこの手の本にあって、写真の露出もほとんどなく、“俺が俺が”という厚かましさも感じられない。すごい人である。(3/10)

010/050
遠藤氏の本はとても読みやすく参考になる。が、この本は昔のように時間をかけてしっかり錬られた本というよりも、ややお手軽に書かれた本、という印象を受けてしまう。かつて、現場力について、いろいろな事業所で実際に見聞きした内容を、分析し、一般化して読ませてくれた頃は、とても参考になった。今作は、新幹線清掃サービス会社について、紹介するものだが、単に会社紹介になってしまっていないか。前作の旭山動物園についての著作は読んでいないが、ひょっとして同様なのではないかという危惧があり、まだ読んでいない。(3/10)

011/051
昨年の秋からラジオ講座を聴いていたのだが、今年に入って挫折。残念ながら今では全く英語の学習をしていない。こういった本を読むと、すぐさま燃え上がるのだが、挫折がやってくるのも早い。英語を学ぶ“目的”が明確になっていないからだ。一体何のために学ぶのか。(3/10)

012/052
名のないシシャ」山田悠介
彼の本はこれが初めて。娘は彼の本をよく読んでいるそうで、若干ホラー気味の本が多いらしいが、この小説は、かなりファンタジーっぽく仕上がっている。最近珍しい書き下ろし小説でもある。主人公は人間ではなく、物の怪でもない、“シシャ”であって、何やら使えない“能力”を持っているらしい。とはいえ、その存在意義は彼ら自身にも、もちろん読者にも判らないというなかなか中途半端な設定なのだけれど、内容的にもまた不完全燃焼といった感じ。(3/12)

013/053
例によって、著者得意のライトミステリで、主人公は霧ヶ峰涼という名の女子高生。ところが、この主人公はなぜか謎を解決することはしない。周りの人間が常に探偵役という珍しい首肯の短編集。(3/14)

014/054
氷川清話」勝海舟
以前から読みたいと思っていた本で、ずっと以前に文庫で買った物をようやく読み切った。幕末の雄である勝海舟が、維新後30年が経った頃に、新聞紙上などに発表した文書を編纂したのが基になっているらしい。いろいろと訳あって、最初に出版されたときは、原典に大きく手が加えられていたそうで、それを廃して、できるだけ原典に忠実に編纂し直したのがこの文庫であるらしい。何れもなくなる直前に書かれた物であるらしいが、非常に含蓄に富みおもしろい書き物になっている。結局一週間足らずで読み切ってしまった。(3/16)

015/055
それをお金で買いますか」マイケル・サンデル
原題は“What Money Can’t Buy ~ The Moral Limits of Market”。気がつけば世の中にお金で買えない物がほとんど無くなってしまった。あらゆる物が金銭化され、投機の対象として市場でやりとりされる。“行列への割り込み権”“インセンティブ”“贈り物”“従業員保険”“命名権”など、感覚的には“これで本当に良いんだろうか”と思うことでも、その“誤り”を立証することは難しい。“正”と“誤”の境界線を引くことは私のは不可能である。Moral Limitsは一体誰が引くことができるのであろうか。(3/19)

016/056
タイトルに惹かれ借り出したもの。残念ながら期待したような中身では無かったが、在京都の企業が紹介されていて、それだけでも良かった。また巻末の参考文献リストは、それだけでなかなか参考になる。こういったリストはありがたい。そしてまた読みたい本が増えてくる。知識はとても有力な武器になるが、それに経験を加え、スキルにまで高めていかないと社会に還元することができない。(3/20)

017/057
岐阜県にある有名な未来工業の創業者へのインタビューを基にした書籍。昔から“よそと違うことをやる”ことをモットーにして伸びてきた中小企業の雄である。(今では上場もされているようなので、中小企業とは言えないかもしれないが。)①常に考え、②他人と差別化し、③良いと思ったことはすぐに行動に移し、④だめならすぐに戻す。最後の一つが最も難しいことかもしれない。(3/20)

018/058
秋元康の仕事学NHK「仕事学のすすめ」制作班編
当代きっての売れっ子プロデューサーの“しごと観”。テレビ番組でのインタビューや対談を基に構成されて物で、彼の発想の始点がよく判っておもしろい。常にポジティブでいることや、全てのことに対して好奇心を失わないことはもちろんのこと、おもしろかったことや興味を引いたことを、“企画のリュックサック”に放り込み、折に触れそれらを取り出すことができるというのは、やはり凡人では難しい。“天才・秋元”と呼ばれるゆえんか。(3/20)

019/059
信長死すべし」山本兼一
本能寺の変への新解釈。これまでから明智光秀の“謀反”については、いろいろなトンでも説を含めた説があるが、真実は歴史の彼方にあり、世の歴史・推理マニアの格好の題材である。この小説では、時の正親町天皇の策略によって、勤王の志が高い明智光秀がたぶらかされたことになっている。あり得るかあり得ないか、こうやっていろいろなことを想像しながら読むのも一興である。(3/23)

020/060
白ゆき姫殺人事件」湊かなえ
何人かの登場人物のモノローグを連ねて小説の形式に仕立て上げている。小説の一部を構成する“関連資料”の最後の一行が、小説の冒頭につながってくると言う形式はおもしろいのだが、ストーリー的にはどうかな。(3/23)

021/061
酒の肴・抱樽酒話」青木正児
解説に曰く“こよなく酒を愛し食いしんぼを自認する中国文学者・青木正児が楽しみながら書いた酒や料理のはなしの数々。”だそうで、中国の古典に出てくる酒と肴の話がこれでもかと出てくる。でも、この本の冒頭に出てくる、宋の大宗に最も珍なる食べ物を問われた側近蘇易簡が応えた“口に合うたものが珍品(適口者珍)である。”という言葉に留めを刺したい。結局、そのときの体調や気候で旨いものはかわるもの。酒もまた然り。(3/23)

022/062
衆愚の果て」高嶋哲夫
前に読んでました。文庫になってタイトルが変わっていたとは、なんかよく似た内容の本だなと思っていたのだが、やられたよ。せっかく買ったので読んだけど。(3/24)

023/063
現世と来世の関門にある郵便局を舞台とする現実と非現実の狭間にあるお話。“神との戦い”が起こるとは、最初のほのぼのとした展開からは想像もつかないラスト。(3/25)

024/064
64」横山秀夫
早く読みたいと願い、ようやく図書館の順番が回ってきて借りることができた。昨年出版のミステリの中では最高におもしろいという評判で、とても楽しみしていた。彼の小説の中では、警察の内部とマスコミがとても詳しく描かれている。この小説でも未解決の誘拐事件と警察内部のキャリアとノンキャリの確執、さらには警察の広報室とマスコミの対立などが、同時進行で描かれ、それこそ息もつけないくらい。噂どおり、習作でした。(3/31)

025/065
勝手にモチベーション」平木あきお
何気に手にしたのですが、本来なら気持ちが落ち込みかけたときに、断片的にでも読み返す方が効果的ではないかと思う。コーチングで使われる自分もOK、あなたもOK”という感覚を忘れないでおきたい。きっと幸せになれる。(3/31)