">「君たちはどう生きるか」; 吉野源三郎
しばらくこのブログの更新ができていなかったが、この間読んだ本がなかったのかというとさに非ず、次から次へととっかえひっかえ乱読していたため、しっかり振り返る暇がなかったというのが正直なところである。
ところで、一夏を越えて9月に入ってから読んだ本で特に心に残ったのが、この一冊である。
この本を手に取るようになった契機というのが、昨年岩波書店が各界の有識者に岩波文庫の中から「私の選ぶ3冊」という企画をした際に上げられていたのを見つけたものです。その上位11冊の本のうちには、全く知らない本がいくつかあったので、早速に取り寄せて読破した中の一冊です。
この本を読んで、真っ先に思ったのは「是非、子供に読ませたい。」ということである。
この本そのものは、1930年代に当時の少年少女(少国民)向けに刊行されたシリーズの中の一冊で、現在の社会とは背景になる情勢が違うので、そのまま素直に読めない部分もありますが、今となっては少年少女と言うよりも少なくとも大学生以上でないと、深く理解することは難しいのではないかと思われる。
当初このシリーズは、いわゆる世界の偉人伝であるとか科学的な知識欲を刺激するような10数冊のシリーズであるが、この1冊に関してはそれらの根底に流れる倫理観であるとか道徳観について、哲学者であり、雑誌「世界」の初代編集長である吉野氏が執筆したものである。
あの時代に良くこのような書物が出版できたものと感心させられる内容で、奥付によると吉野源三郎は、当時からリベラル派で知られ、様々な迫害を受けたようである。
この本の中では、主人公である中学一年生のコペル君に示唆を与える叔父さんの口を借り、吉野氏の思想の一端が述べられている。執筆当時、氏は36,7才であったはずであるから、まさに自身を置き換えての提言、助言であったのだろう。
最後に、この本を読んで2番目に思ったこと。
「今の子供達には、ちょっと難しいかな。でもいつか読んで欲しい。」
そんな本であった。