2025年3月は、小説13冊、その他3冊、合計16冊という結果になりました。
これで、月15冊ペースが三カ月続いています。実は、今年に入って、途中まで読んでギブアップした本が5冊以上あって、根気と集中力が続かなくなって来たことを実感しています。この流れは止められないのかな。
てなことで、今月のお薦めです。
今月は、本屋大賞の候補作を2冊読んだのですが、その中では『アルプス席の母』が良かったです。タイトルからわかるとおり、高校野球をテーマにした小説なのですが、視点が斬新で、感心しました。冒頭の描写から結末が読めていたような気になっていたところ、いい意味で裏切られた感がする展開で、かなりお薦めできます。
続いては、『笑う森』も良かったです。途中まで見せられたばらばらの物語をあんな形でつなげるとは、素晴らしい構成力かと思います。こちらも、予想を裏切る結末で、とても良かったです。こちらもお薦めです。
もう一冊、『誰かがこの町で』も良かったです。登場人物の一人が、ちょっと信じられないくらい無謀な暴走をするところは、かなり無理があるなと思いましたが、それ以外は社会派のミステリとして良い出来だと思います。
でもって、小説以外の本ですが、近年話題になった教育勅語に関する『教育勅語と日本社会』が良かったです。こういったものにはアレルギーがあるという方も、80年前までは、これが常識で、このように日本人は洗脳されていったんだという歴史を学ぶ意味でもとても価値ある一冊だと思います。まぁ、騙されたと思って読んでみてください。ひょっとしたら面白いかもしれません。
冒頭に書いたとおり、最近は集中力が続かず、長い書物を読み通すのがしんどくなってきました。歴史や哲学などは、あんなに好きだったのに、読もうという意欲もあまり湧いてこないこないのは、年を取ったせいとは思いたくないですが、やはり老化には勝てないということでしょうか。
かつてのような馬力はないですが、月も変わったところで、今後は読みたくなったら、読みたい本を読むことに徹していきたいと思います。
001/030
「ほどなく、お別れです」長月天音
こちらも初めて読む作家さんです。主人公は葬儀屋でアルバイトとして働く女子大生。どうも彼女は特殊な能力があって、『視える』らしいのです。それはこの仕事にとって良いことなのかどうか。ある種のお仕事小説なのですが、ちょっと良かったです。続編が出ているので、それらも読んでみようかと思います。(3/2)
002/031
「ヒトリコ」額賀澪
引き続き初見の作家さんです。小学五年生のある日、不条理な理由で教師からも周りの児童からもハブられてしまった主人公の少女。周りに一切期待することなく、『ヒトリコ』として中学生活を送ります。その後に進学した高校で、不条理な出来事のききっかけとなった幼馴染と再会し、ヒトリコの心境に少しずつ変化が起こります。すっきり爽快とはいきませんが、良いお話でした。(3/5)
003/032
「明智恭介の奔走」今村昌弘
『このミス大賞』をとり映画化もされた『屍人荘の殺人』で、とても残念なキャラとなってしまった大学生を主人公に据えた前日譚です。続編が2作で止まっているので、ネタ切れかと心配していたのですが、こういう展開方法もあるんだねという作品でした。まずますでした。(3/7)
004/033
「笑う森」荻原浩
これは面白かったです。主人公は障害を持った少年で、ある日シングルマザーの母親と『神森』という広大な森林へ行ったところで、行方不明になってしまうが、数日後にほぼ健康体で発見されます。特に栄養状態が悪いわけでもなく、大きなけがもしていない。この数日間、どうやって過ごしていたのか。少年の叔父が、その謎を解くために奔走します。読み応えのある良い物語でした。良かったです。(3/9)
005/034
「天皇陵の近代史」外池昇
全国に天皇陵は数多くありますが、古代の天皇陵については、かなりいい加減なもので、ほぼ実在していないことが明らかな天皇たちの陵墓もしっかり残されています。これらは、江戸時代末期に、宇都宮藩の一藩士の立案によって、幕府が天皇陵の実態を調査し、必要な修復をしたことに始まるそうです。そんな歴史があったとhとは、この本を読むまで全く知りませんでした。今から25年前、著者がまだ40歳代だったころに書かれたものでした。なかなか興味深い本でした。このさい、欠史八代と言われている実在しないであろう天皇たちの陵墓を周ってみようかなと思います。(3/11)
006/035
「凪の残響 警視庁殺人分析班」麻見和史
これは、お気に入りシリーズの一作です。舞台は東京お台場、ショッピングセンター内で切断された指が4本発見されるところから物語がスタートします。この著者の描く警察小説は結構好きです。このシリーズの場合、主人公がかなり気に入っています。
(3/14)
007/036
「私の知る花」町田その子
今年の本屋大賞ノミネート作品だそうです。狙いをつけて借りてきました。始まりは中学生カップルの痴話げんかだったりして、ヤングアダルト向けの作品かと思いきや、中盤からは、しっかり大人向けの激しい物語でした。面白作品でしたが、登場人物たちのキャラ設定に、かなり無理をさせているように見受けられました。ちょっと詰め込み過ぎではなかろうか。(3/15)
008/037
「徹底検証 教育勅語と日本社会 いま、歴史から考える」岩波書店編
かなり難解で時間が掛かりましたが、教育勅語を復権させてはならないという危機感をバネに難とか読み切ることができました。教育勅語にも良いことが書いてあるとか、今の社会にも通じる部分があるとか、訳の分からない妄言を吐く輩が、実は原文を読んでいないという指摘には納得できる部分があります。岩波書店らしいなかなか硬派で実のある論集でした。(3/16)
009/038
「アルプス席の母」早見和真
2025年度本屋大賞の候補作です。タイトルから分かるとおり高校野球をテーマにした物語なのですが、主人公は高校球児の母親。母一人子一人で育てた息子が中学卒業後、大阪の新興校からの誘い受け神奈川県から進学。看護師という全国どこでも働ける職業であることから、母親も思い切って大阪へ移住。父母会の独特かつ理不尽なルールに心を揺さぶられながら、母子で憧れの甲子園を目指す、なかなか胸アツの物語でした。(3/20)
010/039
「ブラック・ショーマンと覚醒する女たち」東野圭吾
ちょっと目にはわかりづらいバーの経営者であり、元アメリカで活躍したマジシャンが主人公のシリーズです。今作では、リフォームの建築家として働く姪から相談を受けて、関わることになる6名の女性が、事件をきっかけに自分に目覚めていくという6編の物語。読みやすくて良いです。(3/20)
011/040
「雫の街 家裁調査官・庵原かのん」乃南アサ
こちらも家庭裁判所の調査官というなかなかお目にかかることのないお仕事小説のシリーズものですね。今作では横浜家裁川崎支部の家事審判部に転勤してきた主人公が、様々な家庭の問題に調査官としてかかわっていきます。事件を解決するわけではなく、スーパーヒロインでもないですが、普通の姿が描かれていて好きです。(3/23)
012/041
「オリオンは静かに詠う」村崎なぎこ
聴覚障害と百人一首という全く異質なテーマを練りこんだ習作でした。舞台は栃木県宇都宮市なのですが、実は同市は百人一首誕生に大きな関係があるそうで、今でも毎年市民大会が開催されるほど盛んにおこなわれているそうです。この小説では、4名の女性が各賞章ごとに主人公として描かれており、それぞれの人生が絡まり合って大団円を迎えます。初めて読んだ作家さんでしたが、とても面白かったです。(3/23)
013/042
「ほどなく、お別れです それぞれの灯火」長月天音
こちらもシリーズ化された小説の第二弾です。主人公は東京スカイツリーの袂にある葬儀会館で働く女性。葬祭コーディネーターを目指して『師匠』である先輩から厳しい指導を受けながらも成長していくというお仕事小説です。大切な人の死を受け入れられない遺族の悲しみやある種の怒りに寄り添い、安らかな見送りのために奮闘します。(3/23)
014/043
「日本の少子化 百年の迷走 人口をめぐる『静かなる戦争』」河合雅司
途中までは、とてもよくできた重厚なルポルタージュだったのですが、終戦から戦後ベビーブームのあたりから、雲行きが怪しくなってきます。まずは現在の少子化はGHQの陰謀に乗せられたリベラル派が招いた説。続いて、独立後の自民政権で少子化の流れを食い止めようとしたところ、民主党政権が逆に加速化させた。その後、政権を奪還した自公政権が、少子化対策を矢継ぎ早に打ち出している。などなど、さすが御用学者の面目躍如というところでした。前半の冷静な分析から、後半は感情的とも思える筆致に変わり、あたかも筆者が変わったかのようです。がっかりでした。(3/28)
015/044
「婿どの相逢席」西條奈加
江戸時代、母、娘、孫娘と三代に渡る女系の経営者が差配する仕出し屋が舞台。そこに孫娘の入り婿として、店に入った若主人が主人公。女尊男卑に凝り固まったお店を、軽やかな身のこなしで解きほぐしていきます。この作者らしい人情物でした。(3/29)
016/045
「誰かがこの町で」佐野広実
2020年第66回江戸川乱歩賞受賞作家の受賞後第一作だそうです。外からは高級住宅街に見えるとある町が舞台。そのブランドを守るために暴走する住民たち。ひょっとしたら、どこかに実在するんじゃないかと思えるようなぞっとするお話でした。結構面白かったです。その後もいくつかミステリを書かれているようなので、まずは受賞作から読んでみようと思います。(3/30)