2026年6月9日火曜日

2026年5月

大型連休のあった5月は小説が8冊で、小説以外が5冊、合計が13冊という結果でした。

以下を読んでいただくとはっきりしているのですが、前半は比較的好調に読み進めていたところ、後半に入って一気にペースダウン。久しぶりに低調な結果となりました。

どうも、気分が沈むと書籍以外に野球中継や、Youtube動画に逃げていたことや、別のことで時間を取られていたことが、この結果につながっているような気がします。

そんな数少ない中での今月のお薦めを4冊絞り出しました。

まず小説では、夏川さんの『エピクロスの処方箋』は、前作同様面白かったです。京都の町で活躍する意思を主人公にした物語で、家族との時間を優先するため、大学病院から町中の病院へ転籍した主人公が活躍する物語で、時折挟まれる京都の町中の風景もお気に入りの一冊です。

もう一冊は、『少年とハリス』が面白かったです。初めて読んだ作家さんでしたが、日米修好通商条約を締結したことで知られるタウンゼント・ハリスの日本滞在時の様子を彼らの身の回りの世話をしていた地元の少年の視点から描いたもので、身を削りながら条約の締結に向け奮闘するさまが描かれています。お薦めです。

小説以外でも二冊。

まずは、『音でデザインする』ですが、音環境デザイナーという耳慣れないお仕事に就いておられる方で、緊急地震速報のあの不気味な音をつくられた方だそうです。朝日新聞の書評欄で取り上げられていたものを読んだものです。著書の中で、デザイナーとアーティストの違いにも書かれているくだりがあって、そのフレーズがとても気に入りました。とても役に立つ一冊でした。お薦めします。

もう一冊は、『世界経済の死角』という本で、二人の経済学者による対談の形で、綴られています。河野さんについては、以前ご紹介した『日本経済の死角』の著者でもあって、この二冊を読むと、我々が物言わぬまま他人任せにしてきたことのツケが回ってきていることに気が付かされます。『誰が悪いのか』『どうすべきなのか』という議論もあるでしょうが、まずは今私たちが置かれている状態について、ちゃんと認識することが大事かと思います。お薦めの良書でした。

冒頭にも書きましたが、実は今年中にとある資格取得を目指して、その勉強のために多くの時間を取られていたのですが、なんと先月中に期限を迎える受験申し込みを忘れてしまっていて、思い出したのが深夜12時を過ぎてからという大失態をしでかしてしまい、今は途方に暮れている状態です。来年まで、モティベーションが保てるか不安しかありません。

そんなこともあって、6月も低調に走り始めましたが、何とか気を取り直していきたいと考えております。

 

001/075

性的同意は世界を救う 子どもの育ちに関わる人が考えたい6つのこと」斉藤章佳、櫻井裕子

月の初めから、なかなか刺激的なタイトルの書籍ですが、図書館の新刊書コーナーに並んでいたのを見かけて借りてきました。加害者臨床家と性教育実践者のお二人による対話形式の書籍です。この6つのこととは、性を「言語化」する、②AVとの付き合い方を考える、ソロプレイの不安を取り除く、子どもが「自立」できる人間関係を築く、性を自己決定する、誤った「男らしさ」から解放される。という6つなのですが、御存じのように日本の性教育は、『教えず、隠す』ことを旨とし、専門家の間ではそれが性犯罪を助長しているというのが常識とされています。「寝た子を起こすなというけれど、寝てる子が突然スマホで起きる」ことで、誤った性知識を身に着けたうえで社会に出てくる。恐ろしいことだと思いませんか。(5/2)

 

002/076

8つの完璧な殺人」ピーター・スワンソン

最近、彼の作品をランダムの読んでいます。この作品では、ある書店主がかつて「完璧な殺人」として、ブログに書いたミステリ小説をなぞるように、事件が起こり、その真犯人に迫りながら、彼の知られざる過去が徐々に明らかになるという物語です。後半が少し息切れ気味に感じたのが少し残念。(5/2)

 

003/077

少年とハリス」稲葉稔

江戸時代末期、日米修好通商条約の締結のため日本に滞在したハリスとその当時彼らの世話をするため雇われた、下田の農家の次男坊との交流を描いたものです。当時の不穏な社会の動きや下田周辺の庶民の生活ぶりが描かれており、殺伐とした情景があまり描かれていないので、肩透かしではありますが、安心でもあります。(5/4)

 

004/078

つながりません スクリプター事件file」長岡弘樹

映像の制作現場に欠かせない記録=スクリプターが主人公のミステリ小説です。各章ごとに、語り手が変化し、主人公自身は決して語り手としては登場しません。それだけに、やや不気味な存在としても描かれています。(5/5)

 

005/079

エピクロスの処方箋」夏川草介

こちらも本屋大賞の候補作でしたね。前作からの続きで、京都を舞台にした医療ものの作品です。著者自身もお医者さんですが、派手な医療現場の描写はほんの一部で、医療従事者の哲学について、深く突き詰めた作品です。主人公家族のこれからを楽しみにしています。(5/6)

 

006/080

音でデザインする 『緊急地震速報音』は、なぜ緊張するのか」小久保隆

こちらも新聞の書評で『アートは無責任、デザインは有責任』という言葉とともに紹介されていたのが心に刺さり、借りてきました。著者は緊急地震速報のあのアラームをデザインした音環境デザイナーとして活躍されており、実際の作品を二次元コード読み取りながら、実体験できるという今ならではの書籍です。書中からの引用です。『インスピレーションで勝負できるアーティストと違って、デザイナーは職人であり、自分の作ったものに対してのちのちまで責任を持たなければならない。』デザインという言葉には、問題を解決するという意味が本来含まれていると聞いたことがあります。つまり、デザインには結果が求められるということですね。職人の技にも通じると思います。(5/7)

 

007/081

 世界経済の死角」河野龍太郎、唐鎌大輔

新旧の経済学者による対談をまとめたもので、河野さんの著書を読んで、惹かれて借りてきました。書中から心に残ったフレーズを引用します。『海外からの旅行者に日本人の労働力を安く叩き売ることが、私たちの豊かさに本当につながるのか』、『(無料の検索やサービス)もしお金を払わずに済んでいるのだとしたら、それは私たちが「顧客」ではなく、「売られる商品」になっているということ』、『イノベーションは意識しなければ、社会に対しては収奪的な作用を持つ』、『多くの自動化は、「平均生産性」を高めることはあっても、「限界生産性」はあまり改善されず、むしろ低下する。つまり人手がいらなくなる』今の経済政策は、収奪者側がイニシアティヴをとっており、このままでは、私たちが豊かになる方向へは進みません。SNSに踊らされていないで、しっかり考えないと。(5/10)

 

008/082

その殺人、本格ミステリに仕立てます」片岡翔

タイトルに惹かれて借りてみたのですが、最後までノレずに読み終わった一冊でした。まず、最近気にはなっていたのですが、どうも私は『本格ミステリ」と呼ばれるものとは相性が悪いようです。持って回った言い回し、手掛かりをすべて提示しなければという呪縛にとらわれた冗長な説明など、読んでいてイライラしてしまう傾向があります。この小説は、本格ミステリではないのですが、同様に印象を持ちました。(5/10)

 

009/083

アラート」真山仁

現在の日本国憲法下での国土防衛、日米安全保障、自衛隊、在日米軍のそれぞれのあり方について、真っ向から切り込んだ一冊です。思想的にすべてに同意するものではありませんが、誰もが考えなければいけないということは間違いありません。日本という国の力を冷静に見積もったうえでの、国家安全保障のあり方について、考えてみましょう。(5/16)

 

010/084

一日署長」大倉崇裕

最近では、劇場版名探偵コナンシリーズの脚本家として名前を見ることが多いのですが、作家としての作品もいくつか拝読しています。この作品は、警視庁の資料庫に配属された女性警察官が、未解決事件の資料を読むと、その当時の所轄署の所長に憑依するというトンでも設定。そしてその時間はきっちり24時間。かくして『一日署長』のできあがり。よく考えましたね。(5/17)

 

011/085

言いなりにならない江戸の百姓たち 『幸谷村酒井家文書』から読み解く 」渡辺尚志

北関東のある村に残された江戸時代後期の古文書から、当時の庶民と武士との関係性などを読み解いた力作です。過去に何度も書いたことですが、私は、庶民の日常生活の編遷に興味がありまして、断片的な記録に残された当時の風景を妄想するのが大好きなのです。江戸時代に入ると、当時の農民層の人たちが残した文書も結構あって、それらがすべて解明できれば、もっとはっきりと絵が描けることでしょう。この本では、村戸村との水争い、村役人の不信任、武士の不行跡などについて、赤裸々に訴え出た記録に基づき、当時の世間を描いています。面白かったです。(5/19)

 

012/086

転がる検事に苔むさず」直島翔

先日読んだテミスの不確かな法廷が、あまりにも面白かったので、同じ著者の作品を借りてみました。本作は、警察小説大賞(すみません、存在すら知りませんでした)受賞作であり、著者のデビュー作に当たるという一冊です。本職は司法担当の記者出身の現役の新聞記者。作品は、警察小説とは言いながら、警察はほとんど活躍しません。主人公である検事は窓際検事で、同僚の若手検事は、捜査の邪魔はするは、勝手な行動をとるわで、社会人としての常識に著しく欠ける人物として描かれています。続編を読むべきか悩むところです。(5/20)

 

013/087

『看護婦』の近代社会史 誇りが拓いた自立への道」山下麻衣

明治時代、近代医療制度が確立していく中で、医師、薬師とともにその一翼を担うことになる看護師の歴史について概観した書籍です。NHKの朝の連続ドラマの主人公としても、当時の看護婦にスポットが当てられているところですが、女性が働ける現場というのは、本当に限られていて、その技術、地位向上のために当時の先駆者たちが奔走したであろうことは想像に難くないところです。当時は、病院勤務の看護婦と患者宅に派遣されて身の回りの世話をする派遣看護婦という存在がったようで、この本では特に後者に焦点を当てて書かれています。書物としては、やや平板に描かれていて、も少し突っ込んだ考察があってもよいのかなと思うところもあって、若干食い足りなさが残りますした。(5/28)

 

2026年5月20日水曜日

2026年4月

新年度最初の月は、小説が12冊、小説以外が11冊で計23冊という結果になりました。

小説以外の本が結構読めた月でしたが、お薦めできる本もかなりあった月でした。一転して5月は今のところやや不調なのですが、巻き返していきたいと思います。

というところで、今月のお薦めですが、本屋大賞候補となった2冊はどちらもよかったです。またおなじみの作家さんと初めての作家さんの計4冊を強くお薦めします。

まずは、瀬尾さんの『ありか』ですが、本文でも書いたとおり、若干のむず痒さはありますが、彼女らしく安心して読める一冊で、人が信じられなく、ササクレだった感情に流されそうなときの一服の清涼剤としていかがでしょうか。お薦めします。

村山さんの『PRIZE』も出版界の裏側に切り込んだ作品で、とてもよかったです。文学賞の受賞をめぐる悲喜こもごもが赤裸々に描かれていて、きっとこんななんやろなとリアリティを感じさせる書きっぷりです。闘争心に満ち溢れた状態のときはよいかもしれません。

定番ですが、東野さんの『透明な螺旋』もよかったです。超人気シリーズなので、舞台設定が難しいかと思いますが、今作は主人公の生い立ちが明かされる衝撃の一冊です。さすがでした。私としては、も一つの人気シリーズ加賀恭介シリーズの新作が読みたいのですがね。

最後の一冊はテレビドラマにもなった『テミスの不確かな法定』もとてもよかったです。主人公の設定とその特性が活かされた活躍、さらにはそれを共有できるバディとの出会いと単なる法定ミステリではなく素晴らしい人間ドラマになっています。続編も予約しましたが、その他の著書も読んでみようと考えています。またドラマはまだ視ていないのですが、録画はしてあるので近いうちに視てみようかと思っています。

小説をたくさん掲げたので、小説以外は3冊に絞ります。

まずは、『日本経済の死角』です。私たち国民は、金融経済政策については国や中央銀行にそのかじ取りを委ねるしかなく、その結果として与えられた環境下で必死に生きていくしかありません。そして、そのかじ取りはどうだったのか、ということを過去のデータを基にとても分かりやすく提示してくれています。政策決定者は結果において責任を取らなければいけないと思うのですが、そうはなっていないのが日本の現実です。とても読みやすい本なので、皆さんにも是非お薦めします。

次の本は、『観光ビジネス』です。これも何気なく借りて読み始めたのですが、あまりに面白くて、ついつい購入してしまいました。こちらもデータを駆使しながら非常に判りやすく書かれていて、観光ビジネスに従事されている方々にとっても、参考になる本かと思います。特にインバウンド向けのお仕事をされている事業者さんには、ぜひともお薦めしたい一冊です。きっと参考になると思います。

最後の一冊は、『大江戸怪談事情』です。こちらは一転して、ファンタジーにあふれる一冊ですが、江戸時代の町中にあふれる噂話を集めた耳嚢という書物に描かれている話のほんの一部を紹介する本です。近世の庶民文化、風俗に興味がある私には、元になった書物にも大変興味があって、いつか読みたいと思っていたところ、新聞の書評でこの本を見つけ、早速予約したものです。耳嚢改めて読みたくなりました。

ということで、充実していた4月はお薦めもいっぱいです。

5月はといえば、最近いろいろなところに興味の手を伸ばしていて、往復の通勤途上以外で本を読む時間の確保が難しくなっています。単に時間に使い方が下手なだけかとも思うのですが、時間が足りないです。でも読みたい本も増えるばかり。悩み多きこの頃です。

 

001/052

日本経済の死角 収奪的システムを解き明かす」河野龍太郎

新年度最初の一冊は、話題のこの本でした。一言で言って、めちゃくちゃ面白くタメになりました。生産性が上がらないから賃金が上がらないと呪文のように聞かされていましたが、実はここ20数年にわたり、しっかり生産性は上昇している。にも関わらず実質賃金は全く上がっていない謎。様々なデータを駆使して、私たちの思考の誤りを指摘してくれる素晴らしい書籍でした。図書館で借りて読んだのですが、改めて購入しました。お薦めの一冊です。

(4/3)

 

002/053

真夜中のタランテラ」麻見和史

今では警察ミステリの妙手である著者の初期の作品です。本格ミステリ小説の登竜門である鮎川哲也賞受賞後の小説ということもあって、かなり力の入った物語です。ただ、その力の入り具合が私にはちょっと重い。(4/4)

 

003/054

ありか」瀬尾まいこ

2026年本屋大賞の候補作でした。彼女らしいハートフルな物語ですが、主人公の母親以外の登場人物はすべて良い人で、それはそれで安心できるのですが、若干むず痒い感じがするのは、私の心が濁っているからでしょうか。でもよい本でした。(4/5)

 

004/055

時計仕掛けの恋人」ピーター・スワンソン

最近のお気に入り作家さんの一冊です。彼の作品はノンシリーズが多いので安心して読めます。本作では、学生時代に付き合っていた恋人が失踪し、十数年を経て主人公の目の前に現れるというところから物語はスタートします。その後、とんでもない大事件に巻き込まれていくのですが、なぜ主人公はそんな不合理な行動をとってしまうのか、私にはさっぱりついていけず、かなり悶々としながら読み終えました。(4/6)

 

005/056

透明な螺旋」東野圭吾

東野さんのガリレオ・シリーズ最新刊です。ようやく予約の順番が回ってきました。本作では主人公湯川教授の知られざる過去が明らかにされます。さすがにお上手です。(4/8)

 

006/057

修理する権利 使い続ける自由へ」アーロン・パーザナウスキー

『修理する権利』とは耳慣れない言葉ですが、最近欧米を中心に広まっている考え方だそうです。そういえば、私たちが日常使っている機械・器具などが故障又は破損したとき、昔なら修理・修繕することを先ずは考えたもので、かつてはオーディオセットなどの修理のため、保証書をしっかりキープしておき、電器屋さんに持ち込むのが常でした。今では、例えばスマホなどは修理すると見せかけて、代替品が提供されるというのが通常のパターンで、もし敢えて修理しようとすると、とんでもない高額な費用が請求される仕組みとなっています。改めて考えさせられる指摘でした。(4/10)

 

007/058

がんと生ききる 悲観にも楽観にも傾かず」落合恵子

落合さんといえば、昔はラジオでその名前をよく聞いたものですが、今なおお健在です。ただ、数年前にがんを発症され、今も病気と共存されております。確か発症後に朝日新聞にも連載で随筆を書かれていたように記憶しているのですが、著者の書かれた文章をじっくり読むのは初めてのように思うのですが、こんな文章を書く人なんだと改めて認識いたしました。不屈の魂に感服いたします。(4/12)

 

008/059

老人支配国家日本の危機 」エマニュエル・トッド

主にコロナ前の数年間に書かれた掌文を集められたものです。中には鋭い指摘もあり、相変わらず刺激的です。『老人支配国家』やばいですね。と言っているうちに、私もすっかりその仲間入りをしてしまいました。自重しなければと思います。(4/14)

 

009/060

みんなで決めた真実」似鳥鶏

裁判がテレビ中継されるようになり、エンターティンメント化し、事件が起きると『名探偵』が現れ、探偵の推理に沿った『台本』が、関係者に配られます。そこでは『真実』に価値がなく『視聴者受けがする真実』が求められます。まぁ、ここまで極端ではないにしても、SNS全盛の現代では、それに近いようなことが起こっていますよね。veiwさえ稼げればよい世界。私たちは、ある種のディストピアに住んでいるのかもしれませんね。(4/15)

 

010/061

コロナ貧困 絶望的格差社会の襲来」藤田孝典

ひょっとすると、今では遠い記憶の彼方へと追いやっているかもしれないパンデミック。この本は、あの当時顕在化した格差社会を、その最中に記録したルポルタージュです。コロナ禍では、すべての人類が均しく被害を受けたと考えがちですが、明らかに階層によって、被害の程度は違っていました。私は、当時現役の公務員でしたので、相当に恵まれた環境にあったと自覚していますが、いわゆる『エッセンシャル・ワーク 』に従事されていた皆さんは、その貢献にも関わらず、十分に報われることがなく、謂われなき中傷すら浴びました。さらに大変だったのが、急遽仕事を失った非正規、派遣の労働者の人たちでした。日本の格差社会はさらに拡大したような記憶があります。(4/15)

 

011/062

エリザベス女王の事件簿 バッキンガム宮殿の三匹の犬」S・J・ベネット

シリーズのものの第二作。英国王室の面々が実名で登場するユニークなミステリ小説です。日本じゃ絶対書けないよね。(4/17)

 

012/063

世界のはじまりの神話学」松村一男

世界の神話の中から、始まりの記を集めたもので、『創造型』、『進化型』、『出現型』といくつかのパターンに分類できるそうで、その物語は、ヒトの移動と主に、文字ではなく言葉で伝播していったと想定されます。日本の物語も同様で、中国からその設定が伝わってきたものと考えられています。面白いですね。(4/17)

 

013/064

観光ビジネス 旅行好きから業界関係者まで楽しく読める観光の教養」内藤英賢

最近出版された本で、図書館の最新刊コーナーにあったものを借りて読んだのですが、これがなかなかためになる一冊でして、観光産業というビジネスについて、最新のデータを駆使しながら、既存の概念を打ちこわして、そのありようを示してくれる素晴らしい一冊でした。特に心に刺さったのが、『観光は地域住民を豊かにするものである』という軸をしっかり立てないと、観光公害とかオーバーツーリズムというネガティブな印象を受け付けることになるという指摘でした。あんまりおもしろかったので、今後のためにと読了後購入いたしました。(4/20)

 

014/065

夜間飛行」サン=テグジュベリ

あまりにも有名な小説ですが、内容については全く知らないまま読みました。タイトルからして、ロマンティックな物語なのかと思っていたのですが、飛行機の黎明期、世界を結ぶ夜間郵便飛行機のパイロットの物語なのですね。著者自身が、かつてはその業務に従事していたらしく、その経験を基に書かれています。嵐の中を飛ぶ覚悟、彼らをそこへ突入させる側の覚悟、それぞれの覚悟が描かれた物語でした。(4/20)

 

015/066

キュレーターの殺人MW・クレイヴン

これまた、最近ドはまりしているミステリ・シリーズです。主人公である男女警察官のバディものであったのだが、今作では女性捜査官の描写が若干少なめで、ちょっと期待外れ。も少し彼女にスポットをあてて書いてほしいと思いました。(4/21)

 

016/067

翻訳がつくる日本語 ヒロインは『女ことば』を話し続ける」中村桃子

~わ、~だわ、~のよ」 といった映画の字幕などでお目にかかる不思議な日本語についての書物です。翻訳小説などでは、なかなかお目に係ることが少ないので、読んでいても性別がわからないことがよくあります。そういう意味では、ある種の役割語なのかもしれませんが、こうやって見てみると、かなり違和感がありますね。勉強になります。(4/22)

 

017/068

身体の大衆文化 描く・着る・歌う」安井眞奈美、エルナンデス・アルバロ編

日文研での『大衆文化』について取り組まれているプロジェクトをまとめた第一弾で、『身体』という切り口で、さまざまな大衆文化について描かれた10本の論文がまとめられたもの。絵画衣服音楽など、ニッチな分野を深堀している。私的には、神社に奉納される絵馬について描かれた章が興味深く面白かったですが、さっぱりわからない章もいくつか。難解なり。(4/23)

 

018/069

白魔の檻」山口未桜

雪と毒ガスに囲まれ、閉ざされた病院で発生する連続殺人。設定からしてとんでもないミステリ小説です。ちょっとぶっ飛びすぎて、なんだかなぁ、という感じです。(4/26)

 

019/070

PRIZE プライズ」村山由佳

これも2026本屋大賞候補作でした。大人気小説家でありながら、直木賞には何度も候補に上るものの、なかなか手が届かない作家が主人公の物語。賞を取るため、さまざまな手を尽くしつつ、バディとなった編集者との二人三脚で傑作を生みだし、見事賞に手が届くのか。終盤は、思わぬ大展開があって、なかなか読み応えのある一冊でした。面白かったです。(4/26)

 

020/071

大江戸怪談事情 『耳嚢』の怪異をひもとく」堤邦彦

江戸後期に実在した江戸町奉行、根岸鎮衛(やすもり)が記した『耳囊』に書かれた怪談奇談について、解説を施した書籍です。霊や妖が跋扈していた時代とは言え、誰もがその存在を信じていたわけではなく、見間違いや勘違いと一刀両断する箇所もあって、ニヤリとさせられます。今に続く、ゆうれいばなしや落語の基となっているお話もいくつか紹介されていて、面白読みものでした。これは、朝日新聞の書評欄で紹介されていた一冊でした。 (4/27)

 

021/072

テミスの不確かな法廷」直島翔

全く視ていないのですが、最近、NHKのテレビドラマになったようで、たまたま図書館で見かけたので借りてきました。いやぁ、なかなか面白かったです。主人公は発達障害と診断された裁判官で、その症状とうまく付き合いながら職務を果たしていきます。とてもよかったので、続きを読みたくて、続編を予約しました。(4/29)

 

022/073

誘拐劇場」潮谷験

滋賀県内の長閑な街で、突如発生した薬物事件。その事件をきっかけに政治家となった俳優が、政界で上り詰める中で、グレーな部分がまことしやかにささやかれる。同時に発生した奇妙な誘拐事件。あまりに多くの情報が突っ込まれたミステリで、お腹一杯になりました。(4/29)

 

023/074

なぜあの人と分かり合えないのか 分断を乗り越える公共哲学」中村隆文

『公共哲学』について、書かれた本なのですが、なかなかに難解。もともと哲学には興味があるのですが、最近は『公共』という言葉に惹かれています。資本主義が行き過ぎて、あらゆるものが収奪の対象となり、本来収奪の対象とすべきでない公共部門が、そのテリトリーを奪われているような気がします。その一つの象徴が『教育』であり、誰もが均しく教育を受ける権利がほぼほぼ蔑ろにされている現実があります。私たちは、もう一度本来のあり方について考えなければいけないのではないでしょうか。本筋とは、ずれますがとても気入った一節を最後に、実践なき理論や思弁が無力であるにしても、理論や思弁なしの実践が危ういこともまた事実である”(4/30)

2026年4月13日月曜日

2026年3月

春はまだ遠いなぁと思っていたところ、突然に春がやってきた3月は、小説が10冊、それ以外が6冊で計16冊という結果になりました。月の前半は、調子よく読めたのですが、後半はかなり重厚な本もあって、若干ペースダウンした印象です。

まず小説のお薦めですが、今月はかなり豊作で、お気に入りの作家さんたちの小説がとてもよかったです。読んだ順に行きますと、

まずは『ケイトの恐れるすべて』ですが、これは前に読んだ作品がとても面白かったので手にしたもので、前作より見劣りするという評価が多いのですが、私的にはとても面白く読みました。本文にも書いていますが、主人公の心理描写が秀逸で、素晴らしいサイコミステリになっています。この作者の作品はいずれも面白く、お薦めです。

続いて『ストーンサークルの殺人』ですが、これも本文に書いているとおり、今のところの今年ナンバーワンの本です。何より、主人公二人のキャラクター設定が秀逸で、英国のミステリ小説部門で最高の賞を受賞した作品です。その続編の『ブラックサマーの殺人』は、バディ感が若干弱まりましたが、とてもよかったです。いずれもお薦めです。

今年の本屋大賞ノミネート作品を二冊読みましたが、私としては伊坂さんの『さよならジャバウォック』がお薦めです。話の運びには、彼らしさが垣間見え、最後まで飽きさせない展開で、引き込まれます。結末もお見事でした。お薦めです。

続いて、小説以外の本の中では、まず『初めてのジェンダー論』がわかりやすい教科書のような本で、一からこの問題を理解するためには最適の本かなと思いました。ジェンダー論というとすぐに『男性差別だ』と騒ぎ立てる愚か者が多いですが、しっかりと問題点を認識するためには、フラットな気持ちでこの本を読んでほしいと思います。よい本でした。

もう一冊は『パワハラ上司を科学する』もよかったです。パワハラというのは、あらゆるハラスメントの根底にあるものと思っておりまして、そのほかのハラスメントは、ほとんど優越的な地位にあるものが、その地位を利用して他者に圧力をかけることによって、帆害を及ぼす状態であります。そのメカニズムを理解することが、そのほかのハラスメントの防止につながると信じています。また、自らがその愚行を犯してしまわないようにも、知識として体に覚えこませておく必要があるとも思っています。お薦めです。

4月になり、一気に春が来たようで、ここ数日は満開の桜が目を楽しませてくれています。決して好きな花木というわけではないのですが、心騒がせる花であることは間違いないですね。

まもなく今年の本屋大賞も発表になりますが、読めたのは3作品のみ。どの本が選ばれるのかとても楽しみです。とりあえず残りのノミネート7作は読んでおこうかなと思っています。

 

 

001/036

タネはどこからきたか?」鷲谷いずみ

この本は、かなり前にどなたかの本の中で紹介されていたもので、思い立って借りてきました。中身は植物の種子に関する解説で、美しい写真が満載の、見て楽しい書籍になっています。植物は、自分では移動できないため、繁殖区域を増やすためには、タネの段階で移動する工夫をしなければいけません。綿毛をつけたり、他の動物にくっついてみたり、はたまた体内へ入ってしまったりと。改めて考えると良くできた不思議なシステムですね。(3/2)

 

002/037

ケイトが恐れるすべて」ピーター・スワンソン

この著者の作品は、最近結構お気に入りで、いずれもノン・シリーズで書かれているので、どれから読んでも問題ないというのがうれしいです。この作品では、過去にトラウマを抱えた主人公の心理描写に多くが費やされており、サイコミステリとしても読める作品でした。面白かったです。(3/2)

 

003/038

はじめてのジェンダー論」加藤秀一

こちらは、ほぼ純粋なジェンダー論の教科書で、テーマごとにわかりやすくまとめられたとても読みやすい本です。また、そのテーマごとに照会されている参考図書のリストがかなり充実しており、ほぼほぼ網羅しているのではないかと思われます。とても良い本でした。(3/3)

 

004/039

資本主義の歴史 起源・拡大・現在」ユルゲン・コッカ

資本主義の通史について、改めて勉強しようと思い読んでみました。そもそも『起原』をどこに置くのかというのはとても難しい話で、気が付けば定着してしまっていた。あるいはその状態を資本主義と名付けた、というのが正しいのかもしれません。始まりは穏やかなイメージだったところが、貪欲な怪物となり、他国の市民を食い尽くすことで成長し、水平的な広がりに限界が見えてくると、垂直的に下層民を蹂躙しながら暴力的な姿をさらしています。いつまでこの膨張が続くのか。いつ、どのように弾けるのか。考えただけでも恐ろしい。(3/5)

 

005/040

経済成長 六つの講義」サイモン・クズネッツ

その昔、景気循環『クズネッツの波』と習った記憶がある経済学者の著書です。こちらも府立図書館のネットワークで他府県の図書館から借りてもらいました。戦前戦中に『経済成長』『GNP』という概念を考えた人でもあるそうですが、そこのところははっきりしません。ただ、GNPについて、これが唯一の尺度であるかどうかについては、疑問を持っておられたそうです。実際現在の尺度のみで測定しようとすると、いつか必ず停まるときがきます。また、『付加価値』のみが価値であるというのも疑問です。誰かいい方法を考えてくれないですかね。(3/6)

 

006/041

ストーンサークルの殺人MW・クレイヴン

これは、文句なしに面白かった。今のところ今年最大のヒットです。あらすじはリンク先から見てほしいのですが、まずは登場人物のキャラクター設定が良くて、いわゆる男女バディもので、静と動、卓越した知と力の絶妙の組み合わせが素晴らしく、二人を取り巻く上司同僚の信頼感も読んでいて気持ちいいくらい。すでにシリーズ化され、6作まで翻訳が出ているようなので、今年はこれを読んでいきます。続編が楽しみです。お薦めです。(3/7)

 

007/042

さよならジャバウォック」伊坂幸太郎

これは、今年の本屋大賞候補作ですね。昔の伊坂さんらしい言い回しも出てくるのですが、らしくない、ゾクゾクするような展開に引きずり込まれます。二つの時系列で物語が進んでいき、どのように収束するのかとワクワクしながら読み続けたところ、意表を突かれる結末で、ああそう来たかと感心しながら読み終えました。さすがです。面白かったです。(3/10)

 

008/043

行き遅れ令嬢の事件簿 公爵さま、前代未聞です」リン・メッシーナ

今年読み始めたコージーミステリシリーズの4作目。前作は、ラブコメ風になってしまいがっかりしていたところですが、今作は主人公の両親の死の真相が明らかになり大きな転機となる作品です。パートナーである公爵のキャラがかなり変わってきたのは残念です。(3/11)

 

009/044

パワハラ上司を科学する」津野香奈美

これは、どこかの書評で紹介されていたように記憶しているのですが、パワハラについて、統計学や心理学など様々な方向から科学的にアプローチして、その構造を明らかにしようとした習作です。残念ながら日本国内については、しっかりした調査は進んでいなくて、アメリカの統計が多く使われているのは仕方のないところで、彼我の国民性の違いというのも大きく関与しているところかと思います。また最も大きな違いは男女の働き方の違いで、女性に対するパワハラ(セクハラ含む)は、表面に出ている以上に多いと想像できます。多くは行為者の精神的な異常性がもたらしたものと考えられるにしても、そういった異常性が仕事の上では評価されるというさらなる異常性も看過できません。身を守る術を考え、身に着けることが重要だと思います。そしてさらに、自分自身がそういった異常性に気づき、抑え込むことが何より大事だと思っています。(3/12)

 

010/045

第八の探偵」アレックス・パヴェージ

書籍の広告で、面白そうかと思い読んでみたのですが、正直期待外れでした。作中策として7つの短編ミステリ小説が描かれ、全体として一つのミステリを構成するという物語なのですが、それぞれが自分にはピンとこず、最後まで惰性で読んでしまいました。申し訳ありません。(3/15)

 

011/046

殺し屋の営業術」野宮有

これは、昨年の江戸川乱歩賞受賞作で、今年の本屋大賞候補作でもあるんですね。かなりぶっ飛んだ設定で、やや苦しいところもあったんですが、物語として破綻することなく収束しているので、そこはお見事です。乱歩賞の選考委員会でもダントツの評価だったのも頷けるところです。面白かったです。(3/15)

 

012/047

行き遅れ令嬢の事件簿 公爵さま、これは罠です」リン・メッシーナ

シリーズ5作目。主人公が結婚へこぎつける寸前にまたまた事件が発生する。自身に振り向けられたむき出しの悪意には、もっと衝撃を受けてもよいのではないかと思うのだが、それ以上に衝撃的な事件に巻き込まれる羽目になる。最後には、さらにややこしい人物が主人公の二人に絡んできて、これは自作移行への伏線なのかと邪推する。(3/19)

 

013/048

777」伊坂幸太郎

これは前に読んだかどうか思い出せず、読み始めたのですが、最後まで確信が持てませんでした。ということは読んでないのかな??ホテルを舞台に複数の業者が入り乱れるドタバタ小説かと思いきや、最後は以外な展開で丸く収まるというマジカルな手口には感服します。さすが伊坂さんですね。(3/21)

 

014/049

侍女の物語」マーガレット・アトレッド

かつてアメリカと呼ばれていた国の近未来を描いたデストピア小説。出生率が極端に低くなった社会では、健康で若い女性は『子を生む道具』として扱われ、それ以外の生き方は許されていない。主人公は、侍女として、司令官の所有物となり、毎月子を産むための儀式を執り行う。主人公の心象描写とモノローグを中心に物語が進み、会話は極端に少ない。救いようのない重い物語でした。(3/27)

 

015/050

ブラックサマーの殺人」M・W・クレイヴン

先日読んだ小説の続編、第二弾を早速読みましたが、これまた面白い。一気に読みました。今作は、過去に殺人罪で有罪になったはずが、その被害者が生存していたことが判明し、主人公は窮地に追い込まれます。今作の相手は、とんでもない知力、権力と財力を持った人物で、相棒と一緒に真相への糸口を探し続けます。これまためちゃくちゃ面白かったです。(3/30)

 

016/051

動物たちのインターネット 生きものたちの知られざる知性と驚異のネットワーク 」マーティン・ヴィケルスキ

こちらも最近の書評で見かけて、読んでみたものです。ICARUSという宇宙から動物たちの動向を探索するシステムをつくった科学者による懐古譚です。このシステムに不可欠なのが、宇宙に情報を届けるために動物たちに装着するタグと宇宙でその情報を受け取り、まとめて地球へ送り返すシステムの二つ。まずは、宇宙にその装置を設置するために頼ったのがロシアのロスコスモスなのですが、なかなかに使いにくい組織のようで、相当に苦労を重ねることになる。その20年を超える苦労の成果がようやく報われようとしている。動物たちから得られる知識は人類を含むすべての生物の未来にも必ず役に立つ。夢のあるプロジェクトです。(3/31)