2026年4月13日月曜日

2026年3月

春はまだ遠いなぁと思っていたところ、突然に春がやってきた3月は、小説が10冊、それ以外が6冊で計16冊という結果になりました。月の前半は、調子よく読めたのですが、後半はかなり重厚な本もあって、若干ペースダウンした印象です。

まず小説のお薦めですが、今月はかなり豊作で、お気に入りの作家さんたちの小説がとてもよかったです。読んだ順に行きますと、

まずは『ケイトの恐れるすべて』ですが、これは前に読んだ作品がとても面白かったので手にしたもので、前作より見劣りするという評価が多いのですが、私的にはとても面白く読みました。本文にも書いていますが、主人公の心理描写が秀逸で、素晴らしいサイコミステリになっています。この作者の作品はいずれも面白く、お薦めです。

続いて『ストーンサークルの殺人』ですが、これも本文に書いているとおり、今のところの今年ナンバーワンの本です。何より、主人公二人のキャラクター設定が秀逸で、英国のミステリ小説部門で最高の賞を受賞した作品です。その続編の『ブラックサマーの殺人』は、バディ感が若干弱まりましたが、とてもよかったです。いずれもお薦めです。

今年の本屋大賞ノミネート作品を二冊読みましたが、私としては伊坂さんの『さよならジャバウォック』がお薦めです。話の運びには、彼らしさが垣間見え、最後まで飽きさせない展開で、引き込まれます。結末もお見事でした。お薦めです。

続いて、小説以外の本の中では、まず『初めてのジェンダー論』がわかりやすい教科書のような本で、一からこの問題を理解するためには最適の本かなと思いました。ジェンダー論というとすぐに『男性差別だ』と騒ぎ立てる愚か者が多いですが、しっかりと問題点を認識するためには、フラットな気持ちでこの本を読んでほしいと思います。よい本でした。

もう一冊は『パワハラ上司を科学する』もよかったです。パワハラというのは、あらゆるハラスメントの根底にあるものと思っておりまして、そのほかのハラスメントは、ほとんど優越的な地位にあるものが、その地位を利用して他者に圧力をかけることによって、帆害を及ぼす状態であります。そのメカニズムを理解することが、そのほかのハラスメントの防止につながると信じています。また、自らがその愚行を犯してしまわないようにも、知識として体に覚えこませておく必要があるとも思っています。お薦めです。

4月になり、一気に春が来たようで、ここ数日は満開の桜が目を楽しませてくれています。決して好きな花木というわけではないのですが、心騒がせる花であることは間違いないですね。

まもなく今年の本屋大賞も発表になりますが、読めたのは3作品のみ。どの本が選ばれるのかとても楽しみです。とりあえず残りのノミネート7作は読んでおこうかなと思っています。

 

 

001/036

タネはどこからきたか?」鷲谷いずみ

この本は、かなり前にどなたかの本の中で紹介されていたもので、思い立って借りてきました。中身は植物の種子に関する解説で、美しい写真が満載の、見て楽しい書籍になっています。植物は、自分では移動できないため、繁殖区域を増やすためには、タネの段階で移動する工夫をしなければいけません。綿毛をつけたり、他の動物にくっついてみたり、はたまた体内へ入ってしまったりと。改めて考えると良くできた不思議なシステムですね。(3/2)

 

002/037

ケイトが恐れるすべて」ピーター・スワンソン

この著者の作品は、最近結構お気に入りで、いずれもノン・シリーズで書かれているので、どれから読んでも問題ないというのがうれしいです。この作品では、過去にトラウマを抱えた主人公の心理描写に多くが費やされており、サイコミステリとしても読める作品でした。面白かったです。(3/2)

 

003/038

はじめてのジェンダー論」加藤秀一

こちらは、ほぼ純粋なジェンダー論の教科書で、テーマごとにわかりやすくまとめられたとても読みやすい本です。また、そのテーマごとに照会されている参考図書のリストがかなり充実しており、ほぼほぼ網羅しているのではないかと思われます。とても良い本でした。(3/3)

 

004/039

資本主義の歴史 起源・拡大・現在」ユルゲン・コッカ

資本主義の通史について、改めて勉強しようと思い読んでみました。そもそも『起原』をどこに置くのかというのはとても難しい話で、気が付けば定着してしまっていた。あるいはその状態を資本主義と名付けた、というのが正しいのかもしれません。始まりは穏やかなイメージだったところが、貪欲な怪物となり、他国の市民を食い尽くすことで成長し、水平的な広がりに限界が見えてくると、垂直的に下層民を蹂躙しながら暴力的な姿をさらしています。いつまでこの膨張が続くのか。いつ、どのように弾けるのか。考えただけでも恐ろしい。(3/5)

 

005/040

経済成長 六つの講義」サイモン・クズネッツ

その昔、景気循環『クズネッツの波』と習った記憶がある経済学者の著書です。こちらも府立図書館のネットワークで他府県の図書館から借りてもらいました。戦前戦中に『経済成長』『GNP』という概念を考えた人でもあるそうですが、そこのところははっきりしません。ただ、GNPについて、これが唯一の尺度であるかどうかについては、疑問を持っておられたそうです。実際現在の尺度のみで測定しようとすると、いつか必ず停まるときがきます。また、『付加価値』のみが価値であるというのも疑問です。誰かいい方法を考えてくれないですかね。(3/6)

 

006/041

ストーンサークルの殺人MW・クレイヴン

これは、文句なしに面白かった。今のところ今年最大のヒットです。あらすじはリンク先から見てほしいのですが、まずは登場人物のキャラクター設定が良くて、いわゆる男女バディもので、静と動、卓越した知と力の絶妙の組み合わせが素晴らしく、二人を取り巻く上司同僚の信頼感も読んでいて気持ちいいくらい。すでにシリーズ化され、6作まで翻訳が出ているようなので、今年はこれを読んでいきます。続編が楽しみです。お薦めです。(3/7)

 

007/042

さよならジャバウォック」伊坂幸太郎

これは、今年の本屋大賞候補作ですね。昔の伊坂さんらしい言い回しも出てくるのですが、らしくない、ゾクゾクするような展開に引きずり込まれます。二つの時系列で物語が進んでいき、どのように収束するのかとワクワクしながら読み続けたところ、意表を突かれる結末で、ああそう来たかと感心しながら読み終えました。さすがです。面白かったです。(3/10)

 

008/043

行き遅れ令嬢の事件簿 公爵さま、前代未聞です」リン・メッシーナ

今年読み始めたコージーミステリシリーズの4作目。前作は、ラブコメ風になってしまいがっかりしていたところですが、今作は主人公の両親の死の真相が明らかになり大きな転機となる作品です。パートナーである公爵のキャラがかなり変わってきたのは残念です。(3/11)

 

009/044

パワハラ上司を科学する」津野香奈美

これは、どこかの書評で紹介されていたように記憶しているのですが、パワハラについて、統計学や心理学など様々な方向から科学的にアプローチして、その構造を明らかにしようとした習作です。残念ながら日本国内については、しっかりした調査は進んでいなくて、アメリカの統計が多く使われているのは仕方のないところで、彼我の国民性の違いというのも大きく関与しているところかと思います。また最も大きな違いは男女の働き方の違いで、女性に対するパワハラ(セクハラ含む)は、表面に出ている以上に多いと想像できます。多くは行為者の精神的な異常性がもたらしたものと考えられるにしても、そういった異常性が仕事の上では評価されるというさらなる異常性も看過できません。身を守る術を考え、身に着けることが重要だと思います。そしてさらに、自分自身がそういった異常性に気づき、抑え込むことが何より大事だと思っています。(3/12)

 

010/045

第八の探偵」アレックス・パヴェージ

書籍の広告で、面白そうかと思い読んでみたのですが、正直期待外れでした。作中策として7つの短編ミステリ小説が描かれ、全体として一つのミステリを構成するという物語なのですが、それぞれが自分にはピンとこず、最後まで惰性で読んでしまいました。申し訳ありません。(3/15)

 

011/046

殺し屋の営業術」野宮有

これは、昨年の江戸川乱歩賞受賞作で、今年の本屋大賞候補作でもあるんですね。かなりぶっ飛んだ設定で、やや苦しいところもあったんですが、物語として破綻することなく収束しているので、そこはお見事です。乱歩賞の選考委員会でもダントツの評価だったのも頷けるところです。面白かったです。(3/15)

 

012/047

行き遅れ令嬢の事件簿 公爵さま、これは罠です」リン・メッシーナ

シリーズ5作目。主人公が結婚へこぎつける寸前にまたまた事件が発生する。自身に振り向けられたむき出しの悪意には、もっと衝撃を受けてもよいのではないかと思うのだが、それ以上に衝撃的な事件に巻き込まれる羽目になる。最後には、さらにややこしい人物が主人公の二人に絡んできて、これは自作移行への伏線なのかと邪推する。(3/19)

 

013/048

777」伊坂幸太郎

これは前に読んだかどうか思い出せず、読み始めたのですが、最後まで確信が持てませんでした。ということは読んでないのかな??ホテルを舞台に複数の業者が入り乱れるドタバタ小説かと思いきや、最後は以外な展開で丸く収まるというマジカルな手口には感服します。さすが伊坂さんですね。(3/21)

 

014/049

侍女の物語」マーガレット・アトレッド

かつてアメリカと呼ばれていた国の近未来を描いたデストピア小説。出生率が極端に低くなった社会では、健康で若い女性は『子を生む道具』として扱われ、それ以外の生き方は許されていない。主人公は、侍女として、司令官の所有物となり、毎月子を産むための儀式を執り行う。主人公の心象描写とモノローグを中心に物語が進み、会話は極端に少ない。救いようのない重い物語でした。(3/27)

 

015/050

ブラックサマーの殺人」M・W・クレイヴン

先日読んだ小説の続編、第二弾を早速読みましたが、これまた面白い。一気に読みました。今作は、過去に殺人罪で有罪になったはずが、その被害者が生存していたことが判明し、主人公は窮地に追い込まれます。今作の相手は、とんでもない知力、権力と財力を持った人物で、相棒と一緒に真相への糸口を探し続けます。これまためちゃくちゃ面白かったです。(3/30)

 

016/051

動物たちのインターネット 生きものたちの知られざる知性と驚異のネットワーク 」マーティン・ヴィケルスキ

こちらも最近の書評で見かけて、読んでみたものです。ICARUSという宇宙から動物たちの動向を探索するシステムをつくった科学者による懐古譚です。このシステムに不可欠なのが、宇宙に情報を届けるために動物たちに装着するタグと宇宙でその情報を受け取り、まとめて地球へ送り返すシステムの二つ。まずは、宇宙にその装置を設置するために頼ったのがロシアのロスコスモスなのですが、なかなかに使いにくい組織のようで、相当に苦労を重ねることになる。その20年を超える苦労の成果がようやく報われようとしている。動物たちから得られる知識は人類を含むすべての生物の未来にも必ず役に立つ。夢のあるプロジェクトです。(3/31)

 

2026年3月11日水曜日

2026年2月

令和8年2月は、小説が6冊、小説以外が11冊で、合計17冊となりました。通常より2~3日少ないことを考えれば、まずまずの結果かなと思います。

今年に入って、『民主主義』、『資本主義』、『近現代史』の分野の書籍を手に取ることが増え、読めば読むほどさらに興味がわいてきます。

ということで、今月も小説少な目という結果になり、お薦め本も難しいのですが、あえて挙げていきたいと思います。

まず、小説についてですが、6冊のうち4冊がシリーズものなので、2冊からの選定となりますが、この中では『家族』でしょうか。

これは、実際にあった事件を題材にとった物語で、かなり恐ろしい物語になっています。被害者の関係者は、まだご存命かと思いますので、小説として取り上げるのはかなり難しかったと思いますが、なかなか重い小説でした。

次いで小説以外の本の中では、まずはエッセイ集になりますが『あらゆることは今起こる』が良かったです。いつもは不思議な世界の小説を書かれている作家さんですが、『ADHD』と診断された御自身の心の中で、どんなことが起こっているのか、とても分かりやすく綴ってくれています。とても勉強になりました。

ついで『あの戦争は何だったのか』も示唆に富む内容でとても面白かったです。この本をきっかけに『近現代史』についての本に手を伸ばすようになりました。『新たな戦前』が終わる前に、しっかりと『あの戦争』について、総括しなければならないと改めて思います。

三冊目は『ブラック郵便局』で、これは地方紙の記者によるルポルタージュで、『郵便局』の知られざる闇の世界の一部にスポットを当てていますが、あまりに闇が深すぎて、その明かりもそこまでは全く届いていない実感があります。自浄作用は全く期待できそうもなく、さらなる追求が望まれます。

2月は残念ながら、ノルマにしていた古典を読み切ることができず、複数の書籍を同時並行で読んでいます。来月にはご報告できるよう、ピッチを上げていきたいと思います。

 

001/019

閲覧厳禁 猟奇殺人犯の精神鑑定報告書」知念実希人

猟奇殺人犯人の精神鑑定報告書とその鑑定をした鑑定人へのインタビューなどから構成される一風変わったサイコミステリで、期待しながら読みました。途中までは面白く読めたのですが、結末が若干頂けない印象で、かなり落胆しながら読み終えました。(2/1)

 

002/020

リバタリアンが社会実験してみた町の話 自由至上主義のユートピアは実現できたのか」マシュー・ホンゴルツ・へトリング

これは、アメリカ、ニューハンプシャー州に実在するグラフトンという町での実話なのですが、この町に完全自由主義者たちが移住をはじめ、彼らが町の大勢を占めるようになったことで起こったことままとめられています。まず、行政が税金を徴収することに異議を唱え、行政サービスも最低限のものに抑えます。消防署や警察署も縮小され、役場も機能しなくなります。それでも自由を謳歌したい住民にとってはユートピアなのか。アメリカという国は変わった国ですね。(2/5)

 

003/021

AIを美学する なぜ人工知能は『不気味』なのか」吉岡洋

美学・芸術額の研究家が著したAIを美学する本です。タイトルにひかれて読みました。書かれている文章は平易なのですが、内容を理解するには能力が足りませんでした。私たちがAIに対して持っている感情ってどんなもんなんでしょうか?『便利』『面白い』あるいは『なんか怖い』『不気味』という感情もあるかもしれません。AIが人間の知能を超えて暴走を始めるときシンギュラリティは、やってくるんでしょうか?そのとき、世界はどう変わってしまうのでしょうか?なんとなくですが、私たちが気づかないうちにことは起こってしまっているように思っています。(2/6)

 

004/022

あらゆることは今起こる」柴咲友香

小説の作家さんによるエッセイ集なのですが、実は『ADHD』と診断された著者がその心象風景を赤裸々に綴ったとても興味深いエッセイなのです。たしか新聞の記事で見かけたのだと記憶しているのですが、とてもよく読まれているようで、図書館で予約してからかなり待つことになりました。あらゆる病がそうなのですが、本人以外の他人には決してそのつらさは理解できないだろうと思っていますが、だからこそ自分と他人では考えも、感情も違うんだという前提で、交わることが重要なんだと改めて思います。(2/9)

 

005/023

『あの戦争』は何だったのか」辻田真佐憲

『あの戦争』と書かれると、日本人は『どの戦争』を思い浮かべるのでしょうか?この本では、1945年に終わったあの戦争を『あの戦争』としていますが、まずはその名称から考察をはじめ、その名称によって『いつ始まったのか』という問いへの答えが違ってきます。私たちは『あの戦争』の総括もしないまま数十年が過ぎて風化してしまい、今では全く新たな歴史を創り上げようというとんでもない動きも見受けられます。この本を読んで、改めて、私たちは新たな戦前に突入したんだと実感しました。(2/10)

 

006/024

資本主義の次に来る世界」ジェイソン・ヒッケル

イギリスの経済人類学者によって書かれた、原題『LESS IS MORE How Degrowth Will Save The World』という書籍の邦訳です。『民主主義』と『資本主義』は、我々が子供のころから当たり前のように存在し、未来永劫続くものだと思っていたところ、『民主主義』はすっかり形態が変わってしまい、『本来の形』がわから難くなってしまいました。当然、この先どうなるのかもわかりません。さらに『資本主義』については、前世紀末に唯一の競合であった『共産主義』が壊滅し、未来に向けてさらに発展していくことが期待されていましたが、今では完全に暴走し、格差が拡大し、万人が幸せになれるシステムではないことが明らかになりましたが、誰もそれを止めることができません。著者は、緩やかな変革を望んであられるように見受けられますが、私は、大きな事故が起きて初めて止められるのではないかと恐れています。とても興味深く面白かったです。(2/12)

 

007/025

家族」葉真中顕

今月二冊目の小説は、かなり恐ろしい小説でした。直木賞候補にもなった作品は、実際にあった大量殺人事件をモティーフにして書かれており、この事件のことを耳にした時も戦慄を覚えましたが、小説として読んで、改めて恐怖を感じました。現実の事件では、首謀者が自死したため、真相は闇の中となりました。小説の中ではどのように描かれるのかと興味を持っていましたが、作品の中でもそれを書くことに躊躇されたのか、詳細には描かれませんでした。遺族もおられることですからやむを得ないんですかね。(2/14)

 

008/026

平家物語の合戦 戦争はどう文学になるのか」佐伯真一

平家物語というと、琵琶法師による語り物としてのイメージが強いですが、読み物としてまとめられたものも多数あるようで、『源平盛衰記』なども、その異本の一種と数えられています。私が小学生のときの担任の先生が、授業中に脱線して、この『源平盛衰記』のお話をしてくれることがあって、宇治川の先陣争いや一の谷の合戦、敦盛の最期など、とてもなじみ深いものでした。敗者である平氏にターゲットを当てて書かれた物語の中で、戦争がいかに描かれているのか。とっても面白かったです。(2/17)

 

009/027

自由の限界 世界の知性21人が問う国家と民主主義」エマニュエル・トッドほか

読売新聞の記者が、そのネットワークを生かして、世界の21名の賢人に行ったインタビューがまとめられています。(2/17)

 

010/028

仏教の歴史 いかにして世界宗教となったか」ジャン=ノエル・ピエール

著者はフランス人でありながら、特に日本の仏教研究についての第一人者で、フランの研究機関が4大宗教について纏めた書籍の一つになります。世界における仏教の歴史がとても端的にまとめられていて、初学者にも理解しやすい中身となっています。インドで生まれた仏教が中国へ伝わったものの、そこから先は仏教全体ではなく、その一部が〇〇宗という形で日本に伝わってきます。なんかこの辺が日本らしいというか、不思議なところですね。面白い。(2/17)

 

011/029

ブラック郵便局」宮崎拓郎

一地方新聞社の記者である著者が、取り上げた一つの新聞記事がきっかけで、明らかになった全国の郵便局で当たり前のように行われている独特のルールについてレポートされたものです。強烈なノルマをこなすための自爆営業やパワハラ、それによる自死など、その闇は計り知れないほど深い。さらには、全国郵便局長会という謎の団体。ある意味諸悪の根源ともいえる組織ですが、なぜか誰もそこにメスを入れることができない。恐ろしいです。(2/18)

 

012/030

公爵さま、それは誤解です 行き遅れ令嬢の事件簿3」リン・メッシーナ

今年に入って読み始めたシリーズの3作目。最初の作品はミステリ要素の強い作品でしたが、前作くらいからその要素が薄くなり、今作に至って、うっすらとミステリ要素はあるものの、ほぼラブコメのような作品になりました。そう思って読むとそれなりに許せる気がして、次作も読むことにしました。(2/18)

 

013/031

弱いロボット」岡田美智男

先日読んだAIの本の参考図書で挙げられていた中で、面白そうなタイトルに惹かれて読んでみました。お掃除ロボットというと、普通はあの丸い形をした自走式のクリーナーを思い浮かべますが、この本に出てくるロボットは、ごみの近くまではやってくるけど、自分ではごみが拾えなくて、誰かに拾ってもらうことでようやくミッションが果たせるゴミ箱ロボットです。人類とロボットの共存の理想形かもしれませんね。とても興味深いです。(2/20)

 

014/032

マスカレード・ライフ」東野圭吾

人気のシリーズとなった作品の最新刊です。半年以上待ってようやく読めることになりました。これまで同様ホテルを舞台にしたミステリですが、今作から主人公は警察を辞めてホテルの従業員として働いています。ヒトは人生を生きる上でも、人知れず仮面をかぶっている。その仮面が外せるときが来るのが幸せなのか、それとも一生かぶり続けられるほうが幸せなんでしょうか。(2/21)

 

015/033

新・古代史 グローバルヒストリーで迫る邪馬台国、ヤマト政権NHKスペシャル取材班

NHKスペシャルで取り上げられた内容を書籍にまとめたものなんですが、なかなか面白かったです。考古学への科学の応用としては『放射性炭素年代測定』がよく知られていますが、この本では『酸素同位体比年輪年代法』という新しい分析術も紹介されていて、とても興味深かったです。また、木々に覆われて定かではない地形を浮かびあがらせる『航空レーザー測量』なども面白い。卑弥呼から倭の五王の間の『空白の4世紀』の謎を解き明かすカギとなる遺跡の発掘も進んできました。あとは宮内庁が頑なに拒否し続けている御陵比定地の調査が進めばなぁと思うのですが。あと、私は個人的には邪馬台国九州説が正しいと思っていて、その衰退とともに大和地域での権力者の勃興がときを置かずして続き、のちの山と調整の基礎となったと推測しています。まぁ、ド素人のおっさんがこんなことを勝手に口のできるというのも平和な証拠ですかね。(2/22)

 

016/034

凍結事案捜査班 時の残像」麻見和史

猟奇的な殺人事件の捜査をする中で、過去の未解決事件とのかかわりが見つかり、コールドケース専門捜査班が合同捜査に乗り出す。妻の死からなかなか立ち直れない主人公の心の回復と事件捜査が並行する。この作者の警察ミステリ小説は、はずれがなくて気に入っています。本作も面白かったです。(2/25)

 

017/035

ルビイ 女性秘匿捜査官・原麻希」吉川英梨

ようやくシリーズの完結編です。相変わらずあまり好みではない設定と展開で、何度も投げ出そうかと思いましたが、何とか完走しました。コメントは特にありません。(2/28)

 

2026年2月9日月曜日

2026年1月

2026年最初の月は、小説が7冊、それ以外の書籍が11冊で、計18冊という結果になりました。

立ち上がりとしてはまずますかなと思いますが、小説が少なめです。そんな中でのお薦めの小説を御紹介します。

まずは今年の一冊目の『どら蔵』です。こちらは、個人的に推している朝井さんの小説で、今作は江戸時代の道具屋の物語です。生き生きとした主人公の描き方に引き込まれ、次のページをめくる手が止まりません。ある意味江戸時代の痛快お仕事小説といった趣ですがとても面白かったです。

そして二冊目は子供のころ絵本で読んだ『ガリバー旅行記』です。いまさらと笑われそうですが、数年前に購入したきり何度も読もうとして読めずに放ってありました。今年に入って改めて読んでみたところ、とんでもなく面白かったです。翻訳もよかったせいかもしれませんが、読みづらい箇所はほとんどなく、最後まで面白く読めました。改めて、著者の世界観には脱帽です。もしまだ完読したことがないという方がおられましたら、ぜひともお薦めです。

というところで小説以外の書籍からのお薦めですが、今月も結構豊作で、絞るのが難しいのですが、心を鬼にして次の三冊をお薦めします。

まず『デザインマネジメント論のビジョン』ですが、こちらは20年ほど前に伝統産業の担当をしていたころにお世話になった大学の先生が著者に名を連ねておらる本ということで、とても興味を持って読んだところ、とてもためになる内容で、マネジメントとして働く方たちにこそ読んでほしい本だなと思いました。めちゃ面白いですお薦めです。

二冊目は『少数派の横暴』です。アメリカの政界を舞台に述べられているので、我が国に置き換えることは難しいですが、彼の国で何が起こっているのかを知るうえでとても有用です。アメリカで起こっていることは遠からず我が国に波及することを考えると、いつかそのうちと思ってしまいます。お薦めです。

三冊目は『肥満の科学』でして、わが身の健康のことを考えつつ読んだのですが、納得させられる内容でした。書かれているとおりの生活を送ることは難しいかなとは思いますが、リスクを理解していることが重要だと思います。同じお悩みをお持ちの皆様にもお薦めです。

二月に入り急激な変化に翻弄されながらこの文章を書いています。

先日の総選挙では、ほとんどの政党が消費税減税を公約に挙げるという異常事態で、投票に値する候補者が見当たりませんでした。(投票には行きましたよ、もちろん!)

子供たちの未来、地球の未来を本気で考えている候補者も、残念ながら見当たりませんでした。

今の自分が未来に残せることは何か。そんな知恵と知識をつけたくて、これからも読書に励みます。

 

001/001

どら蔵」朝井まかて

2026年の一冊目は、昨年末から読み始めたこの本でした。この方の時代小説は面白くて、いつも楽しみにしています。今作は、江戸時代の道具屋が主人公。上方でしくじって江戸に下り、ようやく商売を軌道に乗せ始めたところで、実家が大変なことに。史実も交えつつの物語は、期待どおり面白かったです。(1/2)

 

002/002

ミルク殺人と憂鬱な夏 中年警部クルフティンガー」フォルカー・クルプフル/ミハイル・コブル

主人公は、ドイツ・バイエルン州の田舎町の中年警部。地元の乳製品製造会社の重役が殺されます。まさかこんな町で殺人事件が起きるとは、というお話なのですが、中途半端にドタバタが入っていて、振り切れていない感じ。原書では7~8冊のシリーズが出ているようですが、邦訳は2作のみ。まぁ、そんな感じなんでしょうね。(1/7)

 

003/003

日本史を支えてきた和紙の話」朽見行雄

著者は元ジャーナリストということで、わかりやすい語り口ですが、それに反比例して内容的にはやや不満足。ただ、安土桃山時代に発明された「紙蝶番」の果たした貢献については、愁眉を開かされた。偉大なる発明です。(1/7)

 

004/004

超AI入門 ディープラーニングはどこまで進化するのか」松尾豊/NHK『人間ってナンだ?超 AI入門 』制作班

AIの第一人者である松尾さん関連の著書ですが、奥付をみると7年前の出版ということで、内容的には一時代前の状況を反映しているような印象。まさかAIが、人類にこれほどの分断をもたらす方向へ進化していくとは考えられていなかったように思います。(1/8)

 

005/005

デザインマネジメント論のビジョンーデザインマネジメント論をより深く学びたい人のために」佐藤典司、八重樫文、後藤智、安藤拓生

府庁での現役時代に、大変お世話になった先生が著者グループにおられるということで、読んでみたのですが、とにかく面白くためになった。途中からメモを取り出したのですが、そのメモも最終的には8ページにも及ぶ結果となり、とてもこの短い行数で語りつくすことはできません。組織になかで何かしらの問題を抱えており、何とかその組織を改善しなければいけないと考えておられる諸氏にはお薦めの一冊です。(1/8)

 

006/006

恋のスケッチはヴェネツィアで 」リース・ボウエン

ここ一、二年ハマっている作家さんで、シリーズものではない作品は初めて見たので借りてみました。内容的にはミステリ要素は少なく、大叔母と姪孫の世代を超えた物語。第二次大戦直前にベネチアで激動の時期を過ごした大叔母から遺贈されたを21世紀初頭9・11の惨劇で息子と切り離されてしまった姪孫がベネチアを訪れ、その鍵の解き明かしていく長大な物語です。こんな小説も書くんだなと再評価しました。(1/12)

 

007/007

戦争の記憶  コロンビア大学特別講義-学生との対話-」キャロル・グラック

著者は、日本の近現代史を専門とするコロンビア大学歴史学教授なのですが、どこで氏の名前を見たのか記憶が定かではないのですが、日本の近現代史を専門に研究されている海外の専門化ということで、とても興味を持ちました。その最初の一冊ということで、手軽な親書を読んだのですが、内容は大学でのゼミの風景を記録したもので、『歴史と記憶』について、『戦争の記憶』『慰安婦の記憶』といったテーマを手掛かりにした学生たちとの対話が収められています。日本人の第二次世界大戦についての記憶は、真珠湾に始まりヒロシマで終わっており、その前の大陸での戦争がすっかり記憶から消えている。という指摘がありました。私たちが加害者であった記憶が消されているんですね。怖いことです。(1/15)

 

008/008

風俗学 路上の思考」多田道太郎

奥付を見ると1978年初版となっていますから、およそ半世紀前の書籍です。最近読んだ本で紹介されていたので、図書館で探して借りてきました。これが、なかなか面白い。当時、京都大学の教授であった著者などが中心となって結成された『現代風俗研究会』での活動の一環として書かれた文章をまとめられたものです。『風俗』と聞くと、何やら猥褻な響きがありますが、この研究会は全く違い、まじめに『風俗』について研究する団体のようです。興味を持ったので、入会案内を請求してみたのですが、どうなりましょうか。特に気に入ったフレーズをいくつか。『fad⇒fashion⇒style;流行風俗習俗』『この社会には4つの性がある。男が見る男、女が見る男、男が見る女、女が見る女』(1/16)

 

009/009

エリカ 女性秘匿捜査官・原麻希」吉川英梨

シリーズの4作目です。ずっと追っていたテロ首謀者の死体が発見されるという衝撃的な事件をめぐる物語です。例によって、警察組織がことさら無能に描かれていて、若干むず痒い。(1/17)

 

010/010

スティグリッツ教授のこれから始まる「新しい世界経済」の教科書」ジョセフ・E.スティグリッツ

かつて自由主義、グローバル主義に疑問を呈し、ノーベル経済学賞を受賞された学者さんということで、一度その著書を読みたいと思っていたのですが、いずれもとんでもない大著ばかりなので、比較的読みやすそうな本を選んで読んでみました。行き過ぎた資本主義とグローバリズムが格差社会、分断社会を生み出しているところまでは納得できるのですが、それを是正する手段として、あまりに空想的なことを述べられていて、やや鼻白む感じ。まぁ、常識的な解決手段はないとは思うのですがね。(1/18)

 

011/011

ガリヴァー旅行記」スウィフト

今年の目標として、月に一冊は手持ちの岩波文庫または古典文学を読もう!という目標に沿い、まず手始めに読んだ一冊です。子供のころに読んだガリバー旅行記は、小人の国リリパット王国への旅があまりにも有名ですが、それ以外に、巨人の国、空飛ぶ島(有名な『ラピュタ』ですね)、馬の国へたどり着き、それらの国について克明な記録を残すという体の物語です。皆さんも読まれたことがおありかと思うのですが、これがまたとても面白い!翻訳もお上手なんだと思いますが、読みやすくてほぼ一気に読めました。こんな面白い本だったとは知りませんでいた。(1/18)

 

012/012

少数派の横暴 民主主義はいかにして奪われるか」スティーブン・レビツキー/ダニエル・ジブラット

2020年のアメリカ大統領選挙で敗れたトランプ大統領が、支持者を焚きつけて、翌年の新大統領就任式が行われる議事堂を襲うという米国史上恥ずべき大事件ののちに書かれた本で、2024年のトランプ復活の前に出版されています。よく知られているように、アメリカの大統領選挙は、世界でも他に類を見ない歪なスタイルをとっていて、選挙での少数派が結果的に勝利するということが当たり前に起こっています。トランプが勝利した2度の大統領選挙も、全国での得票数は対戦相手のほうが上回っていたにもかからずなぜか勝利してしまった。実は2000年代以降のアメリカ大統領、上院、下院の選挙で、共和党の得票総数が民主党のそれを上回ったのは数度だけであるにもかかわらず、その多くに共和党が勝利しているという奇妙な制度なんです。日本のような多党制だと目立ちませんが、二大政党が支配するアメリカではかなり目立ちます。だれも疑問に思わないというのがとても怖い。勉強になる本でした。(1/22)

 

013/013

肥満の科学 ヒトはなぜ太るのか」リチャード・J.ジョンソン

これも面白かった。ヒトはなぜ太るのか。ヒトという生物の生存本能が、イザという時のため体内に脂肪を蓄積させてしまうといわれていますが、この本では膨大な研究の蓄積から、そのスイッチを探すというテーマに絞り込み、考察を加えています。細かな分析は省略しますが、果糖旨味塩分の三つが、そのトリガーになると解明されています。それらの『地雷』を避けつつ、必要な栄養を補給するためのダイエット方法についても提示されていますので、興味にある方はぜひお読みください。とりあえず、コメ、小麦を減らして、ビタミンcのサプリを吞んでいます。(1/22)

 

014/014

18マイルの境界線 法医昆虫学捜査官」川瀬七緒

これもお気に入りのシリーズなんですが、結構久しぶりの新刊ということで、かなり驚いています。また、続きがあるのかなぁ。(1/25)

 

015/015

『黒人』は存在しない アイデンティティの釘付けについて」タニア・ド・モンテーニュ

『黒人女性-クローデット・コルヴィンの知られざる人性』というノンフィクション小説と表題のエッセイが収録された一冊で、昨年新聞の書評で取り上げられていたことから、ぜひ読みたいと図書館で探してきました。この小説は、1960年代、アメリカ・モンゴメリーのバスボイコットに端を発する人権運動を描いたもので、白人に席を譲らなかったため逮捕されたローザ・パークスと運動を主導したマルティン・ルーサー・キング・ジュニアの陰に隠れて、 無き物にされた一人の少女にスポット当てた習作です。(1/27)

 

016/016

ネット怪談の民俗学」廣田龍平

ネット上で語られる怪談、都市伝説といったものについて、まじめに考察された研究書です。いかんせん、ネットスラングに疎い身にはかなり難解で、何度も放り出しそうになりました。ネット怪談の黎明期は、いわゆる『掲示板』という特殊なサイトに文字情報として発信されたものが、その後画像を含むようになり、現在は映像も加えて広がっているようです。さらに今では、本物と見分けがつかないほどにつくられた映像が幅を利かせるようになり、何がなんやらわからなくなってきました。そのうち、そんなフェイク動画が重犯罪や戦争を巻き起こすようになれば、『怪談』などとふざけている場合ではないかもしれません。(1/28)

 

017/017

科学的根拠で子育て 教育経済学の最前線」中室牧子

教育経済学の第一人者による近著です。様々なデータを駆使して、効率的な子育てについて描かれています。残念ながら、日本ではこの方面の研究がほとんど進んでいなくて、海外のデータばかりであるのがとても残念です。いずれにせよ、家庭での親子の会話や習慣づけが、経済的には最も有用であるそうです。(1/30)

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018/018

公爵さま、いい質問です 行き遅れ令嬢の事件簿2」リン・メッシーナ

こちらも最近読み始めたコージーミステリのシリーズです。主人公の女性が、どんどん人が変わったように成長していく様がとても好感持てます。続きを読みます。(1/31)