2026年6月9日火曜日

2026年5月

大型連休のあった5月は小説が8冊で、小説以外が5冊、合計が13冊という結果でした。

以下を読んでいただくとはっきりしているのですが、前半は比較的好調に読み進めていたところ、後半に入って一気にペースダウン。久しぶりに低調な結果となりました。

どうも、気分が沈むと書籍以外に野球中継や、Youtube動画に逃げていたことや、別のことで時間を取られていたことが、この結果につながっているような気がします。

そんな数少ない中での今月のお薦めを4冊絞り出しました。

まず小説では、夏川さんの『エピクロスの処方箋』は、前作同様面白かったです。京都の町で活躍する意思を主人公にした物語で、家族との時間を優先するため、大学病院から町中の病院へ転籍した主人公が活躍する物語で、時折挟まれる京都の町中の風景もお気に入りの一冊です。

もう一冊は、『少年とハリス』が面白かったです。初めて読んだ作家さんでしたが、日米修好通商条約を締結したことで知られるタウンゼント・ハリスの日本滞在時の様子を彼らの身の回りの世話をしていた地元の少年の視点から描いたもので、身を削りながら条約の締結に向け奮闘するさまが描かれています。お薦めです。

小説以外でも二冊。

まずは、『音でデザインする』ですが、音環境デザイナーという耳慣れないお仕事に就いておられる方で、緊急地震速報のあの不気味な音をつくられた方だそうです。朝日新聞の書評欄で取り上げられていたものを読んだものです。著書の中で、デザイナーとアーティストの違いにも書かれているくだりがあって、そのフレーズがとても気に入りました。とても役に立つ一冊でした。お薦めします。

もう一冊は、『世界経済の死角』という本で、二人の経済学者による対談の形で、綴られています。河野さんについては、以前ご紹介した『日本経済の死角』の著者でもあって、この二冊を読むと、我々が物言わぬまま他人任せにしてきたことのツケが回ってきていることに気が付かされます。『誰が悪いのか』『どうすべきなのか』という議論もあるでしょうが、まずは今私たちが置かれている状態について、ちゃんと認識することが大事かと思います。お薦めの良書でした。

冒頭にも書きましたが、実は今年中にとある資格取得を目指して、その勉強のために多くの時間を取られていたのですが、なんと先月中に期限を迎える受験申し込みを忘れてしまっていて、思い出したのが深夜12時を過ぎてからという大失態をしでかしてしまい、今は途方に暮れている状態です。来年まで、モティベーションが保てるか不安しかありません。

そんなこともあって、6月も低調に走り始めましたが、何とか気を取り直していきたいと考えております。

 

001/075

性的同意は世界を救う 子どもの育ちに関わる人が考えたい6つのこと」斉藤章佳、櫻井裕子

月の初めから、なかなか刺激的なタイトルの書籍ですが、図書館の新刊書コーナーに並んでいたのを見かけて借りてきました。加害者臨床家と性教育実践者のお二人による対話形式の書籍です。この6つのこととは、性を「言語化」する、②AVとの付き合い方を考える、ソロプレイの不安を取り除く、子どもが「自立」できる人間関係を築く、性を自己決定する、誤った「男らしさ」から解放される。という6つなのですが、御存じのように日本の性教育は、『教えず、隠す』ことを旨とし、専門家の間ではそれが性犯罪を助長しているというのが常識とされています。「寝た子を起こすなというけれど、寝てる子が突然スマホで起きる」ことで、誤った性知識を身に着けたうえで社会に出てくる。恐ろしいことだと思いませんか。(5/2)

 

002/076

8つの完璧な殺人」ピーター・スワンソン

最近、彼の作品をランダムの読んでいます。この作品では、ある書店主がかつて「完璧な殺人」として、ブログに書いたミステリ小説をなぞるように、事件が起こり、その真犯人に迫りながら、彼の知られざる過去が徐々に明らかになるという物語です。後半が少し息切れ気味に感じたのが少し残念。(5/2)

 

003/077

少年とハリス」稲葉稔

江戸時代末期、日米修好通商条約の締結のため日本に滞在したハリスとその当時彼らの世話をするため雇われた、下田の農家の次男坊との交流を描いたものです。当時の不穏な社会の動きや下田周辺の庶民の生活ぶりが描かれており、殺伐とした情景があまり描かれていないので、肩透かしではありますが、安心でもあります。(5/4)

 

004/078

つながりません スクリプター事件file」長岡弘樹

映像の制作現場に欠かせない記録=スクリプターが主人公のミステリ小説です。各章ごとに、語り手が変化し、主人公自身は決して語り手としては登場しません。それだけに、やや不気味な存在としても描かれています。(5/5)

 

005/079

エピクロスの処方箋」夏川草介

こちらも本屋大賞の候補作でしたね。前作からの続きで、京都を舞台にした医療ものの作品です。著者自身もお医者さんですが、派手な医療現場の描写はほんの一部で、医療従事者の哲学について、深く突き詰めた作品です。主人公家族のこれからを楽しみにしています。(5/6)

 

006/080

音でデザインする 『緊急地震速報音』は、なぜ緊張するのか」小久保隆

こちらも新聞の書評で『アートは無責任、デザインは有責任』という言葉とともに紹介されていたのが心に刺さり、借りてきました。著者は緊急地震速報のあのアラームをデザインした音環境デザイナーとして活躍されており、実際の作品を二次元コード読み取りながら、実体験できるという今ならではの書籍です。書中からの引用です。『インスピレーションで勝負できるアーティストと違って、デザイナーは職人であり、自分の作ったものに対してのちのちまで責任を持たなければならない。』デザインという言葉には、問題を解決するという意味が本来含まれていると聞いたことがあります。つまり、デザインには結果が求められるということですね。職人の技にも通じると思います。(5/7)

 

007/081

 世界経済の死角」河野龍太郎、唐鎌大輔

新旧の経済学者による対談をまとめたもので、河野さんの著書を読んで、惹かれて借りてきました。書中から心に残ったフレーズを引用します。『海外からの旅行者に日本人の労働力を安く叩き売ることが、私たちの豊かさに本当につながるのか』、『(無料の検索やサービス)もしお金を払わずに済んでいるのだとしたら、それは私たちが「顧客」ではなく、「売られる商品」になっているということ』、『イノベーションは意識しなければ、社会に対しては収奪的な作用を持つ』、『多くの自動化は、「平均生産性」を高めることはあっても、「限界生産性」はあまり改善されず、むしろ低下する。つまり人手がいらなくなる』今の経済政策は、収奪者側がイニシアティヴをとっており、このままでは、私たちが豊かになる方向へは進みません。SNSに踊らされていないで、しっかり考えないと。(5/10)

 

008/082

その殺人、本格ミステリに仕立てます」片岡翔

タイトルに惹かれて借りてみたのですが、最後までノレずに読み終わった一冊でした。まず、最近気にはなっていたのですが、どうも私は『本格ミステリ」と呼ばれるものとは相性が悪いようです。持って回った言い回し、手掛かりをすべて提示しなければという呪縛にとらわれた冗長な説明など、読んでいてイライラしてしまう傾向があります。この小説は、本格ミステリではないのですが、同様に印象を持ちました。(5/10)

 

009/083

アラート」真山仁

現在の日本国憲法下での国土防衛、日米安全保障、自衛隊、在日米軍のそれぞれのあり方について、真っ向から切り込んだ一冊です。思想的にすべてに同意するものではありませんが、誰もが考えなければいけないということは間違いありません。日本という国の力を冷静に見積もったうえでの、国家安全保障のあり方について、考えてみましょう。(5/16)

 

010/084

一日署長」大倉崇裕

最近では、劇場版名探偵コナンシリーズの脚本家として名前を見ることが多いのですが、作家としての作品もいくつか拝読しています。この作品は、警視庁の資料庫に配属された女性警察官が、未解決事件の資料を読むと、その当時の所轄署の所長に憑依するというトンでも設定。そしてその時間はきっちり24時間。かくして『一日署長』のできあがり。よく考えましたね。(5/17)

 

011/085

言いなりにならない江戸の百姓たち 『幸谷村酒井家文書』から読み解く 」渡辺尚志

北関東のある村に残された江戸時代後期の古文書から、当時の庶民と武士との関係性などを読み解いた力作です。過去に何度も書いたことですが、私は、庶民の日常生活の編遷に興味がありまして、断片的な記録に残された当時の風景を妄想するのが大好きなのです。江戸時代に入ると、当時の農民層の人たちが残した文書も結構あって、それらがすべて解明できれば、もっとはっきりと絵が描けることでしょう。この本では、村戸村との水争い、村役人の不信任、武士の不行跡などについて、赤裸々に訴え出た記録に基づき、当時の世間を描いています。面白かったです。(5/19)

 

012/086

転がる検事に苔むさず」直島翔

先日読んだテミスの不確かな法廷が、あまりにも面白かったので、同じ著者の作品を借りてみました。本作は、警察小説大賞(すみません、存在すら知りませんでした)受賞作であり、著者のデビュー作に当たるという一冊です。本職は司法担当の記者出身の現役の新聞記者。作品は、警察小説とは言いながら、警察はほとんど活躍しません。主人公である検事は窓際検事で、同僚の若手検事は、捜査の邪魔はするは、勝手な行動をとるわで、社会人としての常識に著しく欠ける人物として描かれています。続編を読むべきか悩むところです。(5/20)

 

013/087

『看護婦』の近代社会史 誇りが拓いた自立への道」山下麻衣

明治時代、近代医療制度が確立していく中で、医師、薬師とともにその一翼を担うことになる看護師の歴史について概観した書籍です。NHKの朝の連続ドラマの主人公としても、当時の看護婦にスポットが当てられているところですが、女性が働ける現場というのは、本当に限られていて、その技術、地位向上のために当時の先駆者たちが奔走したであろうことは想像に難くないところです。当時は、病院勤務の看護婦と患者宅に派遣されて身の回りの世話をする派遣看護婦という存在がったようで、この本では特に後者に焦点を当てて書かれています。書物としては、やや平板に描かれていて、も少し突っ込んだ考察があってもよいのかなと思うところもあって、若干食い足りなさが残りますした。(5/28)

 

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