2026年5月20日水曜日

2026年4月

新年度最初の月は、小説が12冊、小説以外が11冊で計23冊という結果になりました。

小説以外の本が結構読めた月でしたが、お薦めできる本もかなりあった月でした。一転して5月は今のところやや不調なのですが、巻き返していきたいと思います。

というところで、今月のお薦めですが、本屋大賞候補となった2冊はどちらもよかったです。またおなじみの作家さんと初めての作家さんの計4冊を強くお薦めします。

まずは、瀬尾さんの『ありか』ですが、本文でも書いたとおり、若干のむず痒さはありますが、彼女らしく安心して読める一冊で、人が信じられなく、ササクレだった感情に流されそうなときの一服の清涼剤としていかがでしょうか。お薦めします。

村山さんの『PRIZE』も出版界の裏側に切り込んだ作品で、とてもよかったです。文学賞の受賞をめぐる悲喜こもごもが赤裸々に描かれていて、きっとこんななんやろなとリアリティを感じさせる書きっぷりです。闘争心に満ち溢れた状態のときはよいかもしれません。

定番ですが、東野さんの『透明な螺旋』もよかったです。超人気シリーズなので、舞台設定が難しいかと思いますが、今作は主人公の生い立ちが明かされる衝撃の一冊です。さすがでした。私としては、も一つの人気シリーズ加賀恭介シリーズの新作が読みたいのですがね。

最後の一冊はテレビドラマにもなった『テミスの不確かな法定』もとてもよかったです。主人公の設定とその特性が活かされた活躍、さらにはそれを共有できるバディとの出会いと単なる法定ミステリではなく素晴らしい人間ドラマになっています。続編も予約しましたが、その他の著書も読んでみようと考えています。またドラマはまだ視ていないのですが、録画はしてあるので近いうちに視てみようかと思っています。

小説をたくさん掲げたので、小説以外は3冊に絞ります。

まずは、『日本経済の死角』です。私たち国民は、金融経済政策については国や中央銀行にそのかじ取りを委ねるしかなく、その結果として与えられた環境下で必死に生きていくしかありません。そして、そのかじ取りはどうだったのか、ということを過去のデータを基にとても分かりやすく提示してくれています。政策決定者は結果において責任を取らなければいけないと思うのですが、そうはなっていないのが日本の現実です。とても読みやすい本なので、皆さんにも是非お薦めします。

次の本は、『観光ビジネス』です。これも何気なく借りて読み始めたのですが、あまりに面白くて、ついつい購入してしまいました。こちらもデータを駆使しながら非常に判りやすく書かれていて、観光ビジネスに従事されている方々にとっても、参考になる本かと思います。特にインバウンド向けのお仕事をされている事業者さんには、ぜひともお薦めしたい一冊です。きっと参考になると思います。

最後の一冊は、『大江戸怪談事情』です。こちらは一転して、ファンタジーにあふれる一冊ですが、江戸時代の町中にあふれる噂話を集めた耳嚢という書物に描かれている話のほんの一部を紹介する本です。近世の庶民文化、風俗に興味がある私には、元になった書物にも大変興味があって、いつか読みたいと思っていたところ、新聞の書評でこの本を見つけ、早速予約したものです。耳嚢改めて読みたくなりました。

ということで、充実していた4月はお薦めもいっぱいです。

5月はといえば、最近いろいろなところに興味の手を伸ばしていて、往復の通勤途上以外で本を読む時間の確保が難しくなっています。単に時間に使い方が下手なだけかとも思うのですが、時間が足りないです。でも読みたい本も増えるばかり。悩み多きこの頃です。

 

001/052

日本経済の死角 収奪的システムを解き明かす」河野龍太郎

新年度最初の一冊は、話題のこの本でした。一言で言って、めちゃくちゃ面白くタメになりました。生産性が上がらないから賃金が上がらないと呪文のように聞かされていましたが、実はここ20数年にわたり、しっかり生産性は上昇している。にも関わらず実質賃金は全く上がっていない謎。様々なデータを駆使して、私たちの思考の誤りを指摘してくれる素晴らしい書籍でした。図書館で借りて読んだのですが、改めて購入しました。お薦めの一冊です。

(4/3)

 

002/053

真夜中のタランテラ」麻見和史

今では警察ミステリの妙手である著者の初期の作品です。本格ミステリ小説の登竜門である鮎川哲也賞受賞後の小説ということもあって、かなり力の入った物語です。ただ、その力の入り具合が私にはちょっと重い。(4/4)

 

003/054

ありか」瀬尾まいこ

2026年本屋大賞の候補作でした。彼女らしいハートフルな物語ですが、主人公の母親以外の登場人物はすべて良い人で、それはそれで安心できるのですが、若干むず痒い感じがするのは、私の心が濁っているからでしょうか。でもよい本でした。(4/5)

 

004/055

時計仕掛けの恋人」ピーター・スワンソン

最近のお気に入り作家さんの一冊です。彼の作品はノンシリーズが多いので安心して読めます。本作では、学生時代に付き合っていた恋人が失踪し、十数年を経て主人公の目の前に現れるというところから物語はスタートします。その後、とんでもない大事件に巻き込まれていくのですが、なぜ主人公はそんな不合理な行動をとってしまうのか、私にはさっぱりついていけず、かなり悶々としながら読み終えました。(4/6)

 

005/056

透明な螺旋」東野圭吾

東野さんのガリレオ・シリーズ最新刊です。ようやく予約の順番が回ってきました。本作では主人公湯川教授の知られざる過去が明らかにされます。さすがにお上手です。(4/8)

 

006/057

修理する権利 使い続ける自由へ」アーロン・パーザナウスキー

『修理する権利』とは耳慣れない言葉ですが、最近欧米を中心に広まっている考え方だそうです。そういえば、私たちが日常使っている機械・器具などが故障又は破損したとき、昔なら修理・修繕することを先ずは考えたもので、かつてはオーディオセットなどの修理のため、保証書をしっかりキープしておき、電器屋さんに持ち込むのが常でした。今では、例えばスマホなどは修理すると見せかけて、代替品が提供されるというのが通常のパターンで、もし敢えて修理しようとすると、とんでもない高額な費用が請求される仕組みとなっています。改めて考えさせられる指摘でした。(4/10)

 

007/058

がんと生ききる 悲観にも楽観にも傾かず」落合恵子

落合さんといえば、昔はラジオでその名前をよく聞いたものですが、今なおお健在です。ただ、数年前にがんを発症され、今も病気と共存されております。確か発症後に朝日新聞にも連載で随筆を書かれていたように記憶しているのですが、著者の書かれた文章をじっくり読むのは初めてのように思うのですが、こんな文章を書く人なんだと改めて認識いたしました。不屈の魂に感服いたします。(4/12)

 

008/059

老人支配国家日本の危機 」エマニュエル・トッド

主にコロナ前の数年間に書かれた掌文を集められたものです。中には鋭い指摘もあり、相変わらず刺激的です。『老人支配国家』やばいですね。と言っているうちに、私もすっかりその仲間入りをしてしまいました。自重しなければと思います。(4/14)

 

009/060

みんなで決めた真実」似鳥鶏

裁判がテレビ中継されるようになり、エンターティンメント化し、事件が起きると『名探偵』が現れ、探偵の推理に沿った『台本』が、関係者に配られます。そこでは『真実』に価値がなく『視聴者受けがする真実』が求められます。まぁ、ここまで極端ではないにしても、SNS全盛の現代では、それに近いようなことが起こっていますよね。veiwさえ稼げればよい世界。私たちは、ある種のディストピアに住んでいるのかもしれませんね。(4/15)

 

010/061

コロナ貧困 絶望的格差社会の襲来」藤田孝典

ひょっとすると、今では遠い記憶の彼方へと追いやっているかもしれないパンデミック。この本は、あの当時顕在化した格差社会を、その最中に記録したルポルタージュです。コロナ禍では、すべての人類が均しく被害を受けたと考えがちですが、明らかに階層によって、被害の程度は違っていました。私は、当時現役の公務員でしたので、相当に恵まれた環境にあったと自覚していますが、いわゆる『エッセンシャル・ワーク 』に従事されていた皆さんは、その貢献にも関わらず、十分に報われることがなく、謂われなき中傷すら浴びました。さらに大変だったのが、急遽仕事を失った非正規、派遣の労働者の人たちでした。日本の格差社会はさらに拡大したような記憶があります。(4/15)

 

011/062

エリザベス女王の事件簿 バッキンガム宮殿の三匹の犬」S・J・ベネット

シリーズのものの第二作。英国王室の面々が実名で登場するユニークなミステリ小説です。日本じゃ絶対書けないよね。(4/17)

 

012/063

世界のはじまりの神話学」松村一男

世界の神話の中から、始まりの記を集めたもので、『創造型』、『進化型』、『出現型』といくつかのパターンに分類できるそうで、その物語は、ヒトの移動と主に、文字ではなく言葉で伝播していったと想定されます。日本の物語も同様で、中国からその設定が伝わってきたものと考えられています。面白いですね。(4/17)

 

013/064

観光ビジネス 旅行好きから業界関係者まで楽しく読める観光の教養」内藤英賢

最近出版された本で、図書館の最新刊コーナーにあったものを借りて読んだのですが、これがなかなかためになる一冊でして、観光産業というビジネスについて、最新のデータを駆使しながら、既存の概念を打ちこわして、そのありようを示してくれる素晴らしい一冊でした。特に心に刺さったのが、『観光は地域住民を豊かにするものである』という軸をしっかり立てないと、観光公害とかオーバーツーリズムというネガティブな印象を受け付けることになるという指摘でした。あんまりおもしろかったので、今後のためにと読了後購入いたしました。(4/20)

 

014/065

夜間飛行」サン=テグジュベリ

あまりにも有名な小説ですが、内容については全く知らないまま読みました。タイトルからして、ロマンティックな物語なのかと思っていたのですが、飛行機の黎明期、世界を結ぶ夜間郵便飛行機のパイロットの物語なのですね。著者自身が、かつてはその業務に従事していたらしく、その経験を基に書かれています。嵐の中を飛ぶ覚悟、彼らをそこへ突入させる側の覚悟、それぞれの覚悟が描かれた物語でした。(4/20)

 

015/066

キュレーターの殺人MW・クレイヴン

これまた、最近ドはまりしているミステリ・シリーズです。主人公である男女警察官のバディものであったのだが、今作では女性捜査官の描写が若干少なめで、ちょっと期待外れ。も少し彼女にスポットをあてて書いてほしいと思いました。(4/21)

 

016/067

翻訳がつくる日本語 ヒロインは『女ことば』を話し続ける」中村桃子

~わ、~だわ、~のよ」 といった映画の字幕などでお目にかかる不思議な日本語についての書物です。翻訳小説などでは、なかなかお目に係ることが少ないので、読んでいても性別がわからないことがよくあります。そういう意味では、ある種の役割語なのかもしれませんが、こうやって見てみると、かなり違和感がありますね。勉強になります。(4/22)

 

017/068

身体の大衆文化 描く・着る・歌う」安井眞奈美、エルナンデス・アルバロ編

日文研での『大衆文化』について取り組まれているプロジェクトをまとめた第一弾で、『身体』という切り口で、さまざまな大衆文化について描かれた10本の論文がまとめられたもの。絵画衣服音楽など、ニッチな分野を深堀している。私的には、神社に奉納される絵馬について描かれた章が興味深く面白かったですが、さっぱりわからない章もいくつか。難解なり。(4/23)

 

018/069

白魔の檻」山口未桜

雪と毒ガスに囲まれ、閉ざされた病院で発生する連続殺人。設定からしてとんでもないミステリ小説です。ちょっとぶっ飛びすぎて、なんだかなぁ、という感じです。(4/26)

 

019/070

PRIZE プライズ」村山由佳

これも2026本屋大賞候補作でした。大人気小説家でありながら、直木賞には何度も候補に上るものの、なかなか手が届かない作家が主人公の物語。賞を取るため、さまざまな手を尽くしつつ、バディとなった編集者との二人三脚で傑作を生みだし、見事賞に手が届くのか。終盤は、思わぬ大展開があって、なかなか読み応えのある一冊でした。面白かったです。(4/26)

 

020/071

大江戸怪談事情 『耳嚢』の怪異をひもとく」堤邦彦

江戸後期に実在した江戸町奉行、根岸鎮衛(やすもり)が記した『耳囊』に書かれた怪談奇談について、解説を施した書籍です。霊や妖が跋扈していた時代とは言え、誰もがその存在を信じていたわけではなく、見間違いや勘違いと一刀両断する箇所もあって、ニヤリとさせられます。今に続く、ゆうれいばなしや落語の基となっているお話もいくつか紹介されていて、面白読みものでした。これは、朝日新聞の書評欄で紹介されていた一冊でした。 (4/27)

 

021/072

テミスの不確かな法廷」直島翔

全く視ていないのですが、最近、NHKのテレビドラマになったようで、たまたま図書館で見かけたので借りてきました。いやぁ、なかなか面白かったです。主人公は発達障害と診断された裁判官で、その症状とうまく付き合いながら職務を果たしていきます。とてもよかったので、続きを読みたくて、続編を予約しました。(4/29)

 

022/073

誘拐劇場」潮谷験

滋賀県内の長閑な街で、突如発生した薬物事件。その事件をきっかけに政治家となった俳優が、政界で上り詰める中で、グレーな部分がまことしやかにささやかれる。同時に発生した奇妙な誘拐事件。あまりに多くの情報が突っ込まれたミステリで、お腹一杯になりました。(4/29)

 

023/074

なぜあの人と分かり合えないのか 分断を乗り越える公共哲学」中村隆文

『公共哲学』について、書かれた本なのですが、なかなかに難解。もともと哲学には興味があるのですが、最近は『公共』という言葉に惹かれています。資本主義が行き過ぎて、あらゆるものが収奪の対象となり、本来収奪の対象とすべきでない公共部門が、そのテリトリーを奪われているような気がします。その一つの象徴が『教育』であり、誰もが均しく教育を受ける権利がほぼほぼ蔑ろにされている現実があります。私たちは、もう一度本来のあり方について考えなければいけないのではないでしょうか。本筋とは、ずれますがとても気入った一節を最後に、実践なき理論や思弁が無力であるにしても、理論や思弁なしの実践が危ういこともまた事実である”(4/30)

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