灼熱の7月は小説が9冊、その他が5冊で計14冊となりました。
自分でも驚いたのですが、前半に小説9冊を続けて読み、後半はその他ばかりという不思議な経過となりました。
先月同様、7月もかなり低調でしたね。加齢のせいか、暑さのせいか、堪え性がなくなってきたような気がしています。
そんな中でのお薦めですが、小説は月初に読んだ作品が軒並みよかったです。
まず『みしらぬ国戦争』です。作者独特の世界観で描かれていて、好戦的な指導者に率いられ、『新しい戦前』といわれる現代の明日が描かれているように感じられます。面白かったです。
続いて『最後の一色』です。こちらは上下巻に分かれた長編小説ですが、私の生まれ故郷の近傍が舞台になっていて、その意味でもとても興味を持って読みました。詳細は以下の本文に譲りますが、戦国期に散った一人の豪傑を見事に描き切っていて、とても面白かったです。劇推しします。
『テミスの不確かな法廷 再審の証人』は、続編にあたるのですが、登場人物に仕掛けがあって、ミステリとしても完成されていました。とてもよかったです。
続いては、新川さんの2冊です。どちらもとてもよかったです。描かれている世界・テーマは全く違いますが、いずれもお薦めします。とてもよかったです。
最後は南さんの『ブラックウェルに憧れて』です。こちらも新川さんの『女の国会』同様、女性であるというだけで虐げられる独特の社会を描いたもので、思わず応援したくなる本です。私も二人の娘の親なので、女性であることで不利な扱いを受ける社会を忌み嫌っており、そうではない社会を残す責任があると思っています。
小説以外の本では『弱い円の正体』でしょうか。本文にも書きましたが、とても興味深い本だったので、図書館から借りて読み始めてすぐに、現物を買い求めました。あちらこちらに付箋をつけながら、読んだのですが、私も個人的には、今後再び円高といわれる状況に戻るとはなかなか思えず、個人所得(給与)が増えて、個人消費が伸びない限りは、1$=150円前後という状況が続くのではないかと考えています。そんな中での消費税減税?撤廃?いったい何を考えているのか、さっぱりわかりません。でも、この書籍はお薦めです。
8月に入っても猛暑が続き、災害も相次いでいます。休日もぐったりして、本に手が伸びることが少なくなってきました。読書も低調です。
なんかすっきりしませんね。
001/096
「みしらぬ国戦争」三崎亜記
この方も非常に好きな作家さんで、描かれる独特の世界が自分の傾向に合っているとひそかに思っています。舞台となった国では数年前から、『未確認隣接国家』と交戦状態にあり、毎日のように国内のあちらこちらで、『爆撃』の被害が起きています。そんな時に、我が国を救ってくれる『ミシラヌク国』祖いう存在がクローズアップされ、救世主のように扱われますが、その正体は、、、という物語で、二人の人物の目線から交互に物語が語られます。交戦時の情報統制、国民感情の誘導など、恐ろしい世界が次々と描かれ、息もつかせない展開です。面白かった。(7/2)
002/097
これは傑作です。一色氏というのは丹後国の最後の守護職にあった武家で、私の故郷とはとても縁がある家です。物語は、一色家と長岡(細川)家の大雲川(由良川)での合戦の場面から始まるのですが、この場所が私の通っていた中学校のすぐ隣。そこからは一気に読みふけりました。長い物語ですが決して飽きさせない物語で、こいつは土地になじみのない方にとっても楽しめる書籍かと思います。本作は、作者が本屋大賞を受賞した『村上海賊の娘』から12年ぶりに描かれた長編小説で、綿密な資料調査の下に描かれており、当時の信長、光秀、細川幽斎父子そして主人公である一色五郎のやり取りがリアル緩慢際に描かれています。も一度言いますが傑作です。お薦めします。(7/9)
003/098
「テミスの不確かな法廷 再審の証人」直島翔
この本も前作がとても面白かったので、引き続き借りてきました。変わらず面白かったです。主人公は発達障害による生きづらさを秘めながらも正義を全うしようとする裁判官で、今作では一軒の再審請求を軸としながら、2つの事件が描かれ、そこで対峙する女性検事が実は大きな役割を担っていたという二重三重の構造になっていて、とても面白かったです。前作ともどもお薦めです。(7/11)
004/099
「女の国会」新川帆立
この作品は、山本周五郎賞も受賞したという習作で、先進国の中では群を抜いて低いジェンダー指数など屁とも思わない日本の国会が舞台になっています。女性というだけでその才能を排除して恥じない社会に未来があるとはとても思えません。本作では、そんな政界における女性差別だけではなく、さらに大きな問題についてもテーマとして挙げられており、女性の国会議員、秘書、新聞記者さらには地方議員が順繰りに語り部となって、旧態依然とした永田町の狭い世界を描くかなり骨太な物語になっています。お薦めです。(7/12)
005/100
「ブックウェルに憧れて]」南杏子
この作家さんもお医者さんなのですが、本作は近年話題になった医大入試時の女性差別を取り上げた物語で、一人の指導教官とその指導を受けた4名の女性医師の物語が、時代を行きつ戻りつ描かれています。現役の医師が書かれているので、若干の誇張はあるとしても、それほど突拍子もないお話ではないのではないかと思わせるリアリティをもって描かれています。これまた一気に読みました。面白かったです。(7/12)
006/101
「梅雨物語」貴志祐介
彼の小説を読むのは久しぶりです。こちらは全く別物の3篇の中編をまとめたもので、ホラーとミステリが混じりあった習作ばかりです。それぞれにエラくマニアックな知識が詰め込まれていて、よくまぁこんな小難しいものをテーマに据えたものと感心するばかりです。(7/15)
007/102
「先祖探偵」新川帆立
自らが幼少期に捨てられて、親どころか自分の名前も知らない状態で、職権で氏名を与えられたことから、依頼人のルーツ探しを専門とする探偵の物語。最初の四話は依頼に基づき行った調査の物語で、雑誌に連載されたもの。中の一話に亀岡市が出てきて驚きました。太田道灌の太田氏のルーツが亀岡市内の太田というところにあるようで、これは知りませんでした。そして大団円となる最後の一話は自らの母親を探す書下ろしの物語。法律家の作者らしく、行政手続き用語が頻出する中で、明らかになった真実には、意表を突かれました。面白かったです。(7/16)
008/103
「イン・ザ・メガチャーチ」朝井リョウ
ご存じのとおり今年の本屋大賞の受賞作で、ようやく予約の順番が回ってきました。いわゆる「推し」について、仕掛ける人、のめりこんでいた人、のめりこんでいく人の三名の視点から順次物語が綴られていきます。彼の作品は、独自の視点から社会を描いたものが多く、感情移入が難しいものが多い印象でしたが、今作品は逆に、よくわかりすぎて読みながら精神が疲弊していくような感じにとらわれる方が多いのではないでしょうか。読者には受けないけど本屋さんが好きそうな感じだなと思って読みました。(7/18)
009/104
「ぼくは化け物きみは怪物」白井智之
本格ミステリの年間ベストテンの常連さんの書籍です。5編の独立した掌編からなる短編集で、ぶっ飛んだ世界が描かれています。あまりにぶっ飛びすぎているにもかかわらず、本格ミステリとして成立させるという手腕には感服しますが、物語としてはどうなんだろうか。(7/20)
010/105
「廃線だけ 昭和の棄景」丸田洋三
ここに揚げるのはどうしようかと思ったのですが、いわゆる写真集に近い書籍で、昭和時代に廃止された鉄道線路や遺棄された鉄道車両等の写真を集めたものです。著者・撮影者は私より少し年下の同世代で、も少しノスタルジックな写真も出てくるかなと思ったのですが、活動範囲が全く違って東日本が中心で、あまりそれは感じませんでした。いわゆる廃墟の写真なのですが、撮影時期からすでに数十年を過ぎていることもあって、そんな風景もすでに消え去っているようです。(7/21)
011/106
「弱い円の正体 仮面の黒字国・日本」唐鎌大輔
図書館で借りて最初の一章を読んだら面白かったので、すぐに購入して続きを読みました。日本の愚かな政治家たちには「円安信仰」があるようで、かつての輸出立国の夢からなかなか抜け出せていないうちに、国内の経済力が弱体化し、かつての強い円は見る影もありません。そしてインバウンド客に安い労働力が搾取されている。この本でも書かれているように、この円安傾向は簡単には治まらないと思います。企業が内部留保をため込んで、労働者に還元しない時代が続き、気が付いたら国内需要が低調のまま改善の見通しが立ちません。そんな中で、海外のデジタルサービスに多額の貢献をするという状況は、かつての経済大国の面影もありません。日本貿易振興機構出身の著者らしく、有望な解決策の一つして海外からの投資誘致を挙げていますが、そんなにうまくいくのか疑っています。(7/23)
012/107
「作り方を作る 佐藤雅彦展公式図録」佐藤雅彦
この本は、この春に朝日新聞の書評で見かけ、すぐに予約したもので、ようやく順番が廻ってきました。著者は、電通でキャリアをスタートされ、CMプランナーとして「ポリンキー」や「バザールでござーる」などのキャンペーンを手掛け、独立後は「だんご3兄弟」を作ったかと思うと「ピタゴラスイッチ」の製作にも携わり、現在は東京藝術大学の名誉教授をされているという著名人なんだそうですが、私はさっぱり知りませんでした。私自身は、ものや制度を作るより、仕組みを作ることに興味があって、何か通じるものがあるかと思い読んでみたものです。残念ながら、その点ではすぐに“これだ!”と思うことは感じられませんでしたが、彼自身が簡単に飛び越えてしまう『踏切版を使ったジャンプ』にたどり着くブレークスルーの源にとても興味を抱きました。(7/24)
013/108
「解きたくなる数学」佐藤雅彦、大島遼、廣瀬隼也
ひとつ前の書籍を読んで、興味を持ち図書館で探してきました。絵本のような体裁ですが、本書には23問の数学の問題が掲載されています。通常の問題集のような問題文や図ではなく、ナット、ダイス、タイルなど私たちの身の回りにある物の写真をベースに問題が作られていて、『思わず解きたくなる』ような体にしてあります。残念ながら、数学的素養に乏しい私には、どの解法も目新しく、とても興味深いものでした。お好きな方はノートとペンを片手にお読みください。(7/27)
014/109
「廃線だけ 平成・令和の棄景」丸田洋三
前に読んだ本の続編です。同じく廃線跡をカメラに収めた写真集。相変わらず東日本が多くて、若干不満。そういえば、10年位前まで舞鶴市の港湾区域内に、かつての舞鶴港線の踏切跡の線路がそのまま放置されていたけど、今もまだそのままなのかなぁ。(7/30)